2×2行列(2次正方行列)の和と積の計算(足し算とかけ算)

行列と行列は行数と列数が同じであれば足すことができる。行数が同じで列数が異なる、あるいが行数が異なり列数が同じという行列に足し算という概念はない。また行列の足し算は交換法則や分配法則など一般的な法則も成立する。

一方、行列と行列のかけ算も定義できる。しかし足し算と違って交換法則は成り立たず、非常に尖った性質を持つ。

$2$ 次正方行列の足し算

まずは例を見てみよう。

[
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 2 \
3 & 4
\end{array}
\right)
+
\left(
\begin{array}{cc}
100 & 200 \
300 & 400
\end{array}
\right)

\left(
\begin{array}{cc}
101 & 202 \
303 & 404
\end{array}
\right)
]

行列の足し算は各成分をそのまま足していることがわかる。

つまり

[
101=1+100\
202=2+200\
303=3+300\
404=4+400
]

となっている。もう一つ例を見てみよう。

[
\left(
\begin{array}{cc}
a & b \
c & d
\end{array}
\right)
+
\left(
\begin{array}{cc}
x & y \
z & w
\end{array}
\right)

\left(
\begin{array}{cc}
a+x & b+y \
c+z & d+w
\end{array}
\right)
]

やはり各成分を足している。

なお引き算も同様である。

[
\left(
\begin{array}{cc}
10 & 10 \
10 & 10
\end{array}
\right)

\left(
\begin{array}{cc}
3 & 4 \
5 & 6
\end{array}
\right)

\left(
\begin{array}{cc}
7 & 6 \
5 & 4
\end{array}
\right)
]

行列の引き算も各成分を引くだけである。

行列のかけ算

足し算と引き算はやや簡単だったが、かけ算はかなり独特で、何度も計算練習しないと慣れない。まずは例から。

[
\left(
\begin{array}{cc}
2 & 3 \
4 & 5
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
a & b \
c & d
\end{array}
\right)

\left(
\begin{array}{cc}
2a+3c & 2b+3d \
4a+5c & 4b+5d
\end{array}
\right)
]

となる。ここで行列のかけ算は実数のかけ算と同様 $\times$ の記号を省略することに注意。

行列のかけ算は足し算のように各成分をそのままかけるのでなく、前の行列の行後の行列の列内積を成分とする。すなわち

(1,1)成分 = 前行列1行目 × 後行列1列目
(1,2)成分 = 前行列1行目 × 後行列2列目
(2,1)成分 = 前行列2行目 × 後行列1列目
(2,2)成分 = 前行列2行目 × 後行列2列目

※上の「×」は内積を意味する。

行列のかけ算

上の図からわかるように行列のかけ算は四つの内積の計算である。

行列のかけ算をここまで複雑に定義したのには理由がある。実は行列のかけ算を上のように定義すると、行列を使って連立方程式が解けるようになるのだ。

行列のかけ算の確認問題

1次の計算をしなさい。

[
(1)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
1 & -2 \
-7 & 3
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
4 & 5 \
-1 & -8
\end{array}
\right)
]

[
(2)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \
0 & 1
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
2 & 3 \
4 & 5
\end{array}
\right)
]

[
(3)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \
0 & 1
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
9 & -3 \
-5 & 7
\end{array}
\right)
]

[
(4)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
-2 & 11 \
4 & 8
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \
0 & 1
\end{array}
\right)
]

[
(5)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
3 & 5 \
1 & 2
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
2 & -5 \
-1 & 3
\end{array}
\right)
]

[su_accordion]
[su_spoiler title="解答" style="fancy"]

1

[
(1)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
1 & -2 \
-7 & 3
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
4 & 5 \
-1 & -8
\end{array}
\right)\

\left(
\begin{array}{cc}
1\cdot 4+(-2)\cdot(-1) & 1\cdot 5+(-2)\cdot(-8) \
(-7)\cdot 4+3\cdot(-1) & (-7)\cdot 5+3\cdot(-8)
\end{array}
\right)\

\left(
\begin{array}{cc}
6 & 21 \
-31 & -59
\end{array}
\right)
]

[
(2)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \
0 & 1
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
2 & 3 \
4 & 5
\end{array}
\right)

\left(
\begin{array}{cc}
2 & 3 \
4 & 5
\end{array}
\right)
]

[
(3)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \
0 & 1
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
9 & -3 \
-5 & 7
\end{array}
\right)

\left(
\begin{array}{cc}
9 & -3 \
-5 & 7
\end{array}
\right)
]

[
(4)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
-2 & 11 \
4 & 8
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \
0 & 1
\end{array}
\right)

\left(
\begin{array}{cc}
-2 & 11 \
4 & 8
\end{array}
\right)
]

[
(5)\ \
\left(
\begin{array}{cc}
3 & 5 \
1 & 2
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
2 & -5 \
-1 & 3
\end{array}
\right)

\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \
0 & 1
\end{array}
\right)
]

[/su_spoiler]
[/su_accordion]

行列のかけ算の重要な性質(単位行列)

実数における $1$ のような存在として単位行列という行列がある。

単位行列 \[ I= \left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{array} \right) \]

単位行列にどのような行列をかけても同じ行列になる。つまり

任意の行列 $A$ と単位行列 $I$ について \[ AI=IA=A \] が成り立つ。

これは線形代数で最も重要な式の一つで、行列が数学や物理でよく使われる一つのゆえんとなっている。

確認問題の二番目から四番目をもう一度見ると、単位行列のかけ算の性質がわかる。

行列のかけ算の重要な性質(逆行列)

確認問題の最後の問題を見ると、まったく違う行列をかけているのにたまたま答えが単位行列になっている。つまり

[
AB=I
]

となっている。このとき $B$ を $A$ の逆行列、または $A$ を $B$ の逆行列という。逆行列はいわば「割り算」である。すなわち

[
B=\dfrac{I}{A}
]

である(行列の分数は存在しない。上の式は便宜上のもの)。これを線形代数では次のように書く。

[
B=A^{-1}
]

行列は分数の代わりにマイナスのべき乗を使う。

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