アリストテレス(形相と質料、善と正義)

アリストテレスは、ソクラテスプラトンに続く古代ギリシアの思想家。

形相と質料

アリストテレスにとって「もの」はエイドス(形相)とヒュレー(質料)から構成される。ヒュレーは「もの」の本質、ヒュレーは「もの」という現実である。例えば鉛筆というもののエイドスは「書くもの」であり、ヒュレーは木や黒鉛などである。

例(鉛筆)

  • エイドス … 書くもの
  • ヒュレー … 木、黒鉛

身の回りにあるものでは、ヒュレーは物質的な性質といえる。鉛筆は木や黒鉛などで作られているが、木と黒鉛をただ組み合わせて作ったものではない。鉛筆は「書く」という目的を達成するものとして、削ったり尖らせたりできるように作られている。

鉛筆の例からわかるように、エイドスはある目的に向かって実現しようとする。そしてヒュレーはエイドスを目的に向かわせるための道具や材料でしかない。種から芽が生えて、やがて実がつくように、ヒュレーという種はやがてエイドスという実を結ぶのである。

プラトンとアリストテレスの違い

「ものの本質」をプラトンはイデア、アリストテレスはエイドスと呼ぶ。

プラトン … イデア
アリストテレス … エイドス

プラトンは本質をイデアという言葉で表し、現象界とイデア界を明確に分けた。鉛筆も本も物質的な存在はそこにあるが、その本質は現実にはない。本質はイデアという世界にあり、私たちはイデアが作る幻想を見ているにすぎない。これがプラトンの考えである。

一方、アリストテレスはエイドスをヒュレーの中にあるものと考えた。つまりエイドスは現実にある、なにか抽象的なものである。

イデア … 現実にない
エイドス … 現実にある

善と幸福

アリストテレスにとって善(最高善)は観想的生活によって達成される。観想(テオリア)とは真理の追求のこと。観想的生活によって幸福が得られるという。

知性的徳と習性的徳

アリストテレスは種々の概念を本格的に分類した最初の哲学者である。アリストテレスは徳を知性的徳と習性的徳に分類した。

知性的徳 … 理性や思考の徳
習性的徳 … 性格や習慣の徳

知性的徳として知恵(ソフィア)、技術(テクネー)、思慮(フロネーシス)がある。車を作るためには工学の知識とそれを実践する技術がなければいけない。これがソフィアとテクネーである。

習性的徳は人柄と習慣に宿る徳のこと。悪口を言う性格に徳があるとはいえないが、アリストテレスにいわせると遅刻癖や夜ふかしする習慣にも徳があるとはいえない。アリストテレスが習慣を重視したことは倫理の試験でテーマになりやすい。

中庸

「ほどほど」という概念を難しい言葉で中庸(ちゅうよう)という。傲慢は良くないが、卑屈も良くない。臆病は良くないが、無謀も良くない。アリストテレスは極端な状態を批判し、両極の真ん中を良しとした。ここでアリストテレスは次の四つの中庸を説いた。

不足 中庸 過剰
鈍感 節制 享楽
臆病 勇気 無謀
野暮 機知 道化
卑屈 自尊 虚栄

中庸(メソテース)は習慣によって身につけられるという。

調整的正義と配分的正義

アリストテレスはベンサムなどの功利主義や現代の政治と税制につながる重要な概念を説いた。それが調整的正義と配分的正義である。

調整的正義 … 刑罰等による不公平の是正
配分的正義 … 能力に応じた報酬

もし誰かにものを盗まれて、その盗人がまったく処罰されなかったら、あなたと盗人の間で経済的な不均衡が生じる。盗人は当然罰せられて、盗んだものをあなたに返すべきである。刑罰などによって両者の不公平な状態を解決することを調整的正義という。

もし隣の人の三倍努力して三倍の点数をとっているのに、内申書の点数がその人よりも低かったら、あなたはきっとその理不尽な内申書と先生に怒るはずだ。能力に応じた評価を与えられるべきだと考えるだろう。能力と功績に応じて報酬を配分することを配分的正義という。

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