Irohabook
0
7030

高校生物記述問題集(随時追加)

細胞の構造

細胞は核、ミトコンドリア、小胞体などの細胞小器官から構成される。

ミトコンドリアと葉緑体は独自のDNAを持ち、自己増殖する。粗面小胞体はリボソームで合成されたタンパク質の高次構造を作り、運搬する。微小管からなる中心体は細胞分裂時に紡錘糸の起点となる。細胞の構造は微小管、中間径フィラメント、アクチンフィラメントといった細胞骨格に支えられている。

  1. 有名な細胞における上皮、結合、筋肉、神経の分類。
  2. 細胞小器官の膜の数。
  3. 小胞体、ゴルジ体、ペルオキシソーム、液胞の性質。
  4. チャネルとポンプの違い。

真核細胞と原核細胞の違いを述べなさい。

真核細胞は核膜、ミトコンドリア、ゴルジ体を持つが、原核細胞はこれらをもたない。

※ 真核細胞でも赤血球はヘモグロビンを大量に積むために核やミトコンドリアを含むほとんどすべての細胞小器官を持っていない。ヒトの精子は核とミトコンドリアと中心体由来のべん毛のみ。

ペルオキシソームについて知るところを述べなさい。

ペルオキシソームは一重膜で覆われた細胞小器官で、脂肪酸のβ酸化などを行う。

モータータンパク質の例をあげた上で、べん毛が動くしくみを述べなさい。

モータータンパク質にはアクチンフィラメント上を動くミオシン、微小管上を動くキネシンとダイニンがある。べん毛は主に微小管から構成され、微小管の間にダイニンがあり、ダイニンがATPを加水分解してエネルギーを出すことで、微小管の屈曲が生じる。

流動モザイクモデルとはなにか?

リン脂質二重層の細胞膜にタンパク質がモザイク状に埋めこまれ、側方に自由に動けるというモデル。

細胞膜を構成するリン脂質の疎水性部分を水は通過できないが、実際は水は細胞内外を自由に移動している。なぜか?

水は細胞膜上にあるアクアポリンというチャネルを通って膜を通過するから。

遺伝

遺伝子はDNAポリメラーゼといった酵素によって半保存的に複製される。遺伝子はRNAポリメラーゼによって転写される。転写産物は選択的スプライシングを受けて伝令RNAになり、核膜孔を通って細胞質に出る。リボソームにおいて、アミノ酸を持つ転移RNAが相補的な塩基配列を持つ伝令RNAに結合し、アミノ酸の列ができる。アミノ酸がペプチド結合によって重合し、タンパク質が合成される。

チェックポイント:

  1. リーディング鎖とラギング鎖。
  2. テロメアとがん細胞。
  3. DNAに関する実験(メンデルのエンドウ実験、グリフィスとエイブリーによる肺炎双球菌の実験、ハーシーとチェイスによるファージの実験、メセルソンとスタールによる半保存的複製の実証実験、シャルガフによるDNA塩基配列の解明、ワトソンとクリックによるDNA二重らせん構造の解明、ビードルとテータムによるアカパンカビ変異株の実験)。
  4. PCR法とDNAクローニングの違い。
  5. PCR法や制限酵素を用いたDNA鑑定。
  6. オペロンとプロモーターとリプレッサー。
  7. エピジェネティクス。
  8. だ腺染色体。
  9. 減数分裂と相同染色体対合。
  10. 組換え価の計算。
  11. 血液型と複対立遺伝子。

特に、肺炎双球菌の実験など、実験の内容と結果(成果)、実験を行った学者の人名、おおまかな時代は注意。RNA干渉やエピジェネティクスといった最新の研究についても最低限の知識は必要。中でも窒素同位体を用いたメセルソンとスタールの実験は非常によく出題される。

がんという病気から出発し、テロメア、遺伝子の発現調節、遺伝子の損傷と修復などを考察することも大切。

細胞を融合させる方法は?

ポリエチレングリコールを加える。

RNA干渉とはなにか?

※ ダイサー、RISC、転写RNAの翻訳阻害といったキーワードが必要です。

エピジェネティクス制御としてDNAのメチル化以外になにがあるか?

ヒストンの化学的装飾と非コード領域RNAによる制御。

一部のタンパク質は合成された後、小胞体内に移動し、立体構造を作られる。この一連の機序を述べよ。

小胞体シグナル配列を持つタンパク質は小胞体内に移動し、分子シャペロンに折りたためられて立体構造をとる。

だ腺染色体とはなにか?

だ腺染色体はキイロショウジョウバエの幼虫などで確認される、DNAがくりかえし複製されて染色体が束になったもの。相同染色体が対合した状態で、ところどころにパフと呼ばれる転写活性領域を持つ。

鎌状赤血球貧血症の発症原因となる遺伝子はホモで幼少時の死亡を招くことが多いが、マラリアの流行域においてこの遺伝子は保存されやすい。なぜか?

鎌状赤血球貧血症の原因遺伝子をヘテロで持つ者はマラリア耐性を持つから。

ビードルとテータムがアカパンカビ変異株を用いた実験によりなにが示されたか? またアカパンカビが遺伝子研究に適する理由はなにか?

一遺伝子一酵素説。

理由:

  1. 世代時間が短く、実験結果がすぐに得られる。
  2. 単相で変異が形質となって表れる。
  3. 変異株と野生株の交雑によって変異株と野生株が1:1で生じる。
  4. 形質が単純。

DNA損傷の原因として考えられるものを考察しなさい。

①放射線。DNAは放射線によって直接イオン化されたり、DNA周囲の水から生じたOHラジカルによって損傷を受ける。
②紫外線。DNA上の連続したピリミジン塩基は紫外線を受けると二量体を形成し、DNAを変異させる。
③化学物質。

遺伝子発現について真核生物と原核生物の違いを述べなさい。

真核生物では転写時に選択的スプライシングが行われ、転写は核内、翻訳は細胞質で行われるが、原核生物ではスプライシングが行われず、転写と翻訳が同時に進行する。

DNA除去修復の機序を説明しなさい。

損傷した塩基が除去されると、塩基がない部位はDNAポリメラーゼによって元の塩基が作られ、DNAリガーゼによって合成された塩基とDNAが結合する。

※ 除去 → 修復 (DNAポリメラーゼ+DNAリガーゼ)

プラスミドとはなにか?

核様体と別に存在する、自律的に増殖する環状DNA。

※ プラスミドは概ね生存に必須でない。

生体内の環境と器官

情報を伝達する物質にホルモンとサイトカインがある。ホルモンはペプチドホルモン、アミノ酸誘導体ホルモン、ステロイドホルモンに分けられる。サイトカインのうち白血球が放出ものをインターロイキンという。視床下部が放出するホルモンのうちバソプレシンとオキシトシンは脳下垂体後葉から直接標的器官に向かう。

  1. クエン酸ナトリウムなど血液凝固の阻止法。
  2. 胎児の心臓のつくりとヘモグロビンの性質(母子の酸素解離曲線の違い)。
  3. 腎臓の再吸収の関する計算。
  4. 血糖値調節。
  5. 体温調節。
  6. 目の遠近調節、明暗調節、暗順応。
  7. 目と視神経の構造。
  8. 筋収縮とせん毛運動のしくみ。
  9. クレアチニンと乳酸について。
  10. 伝導と伝達の違い。
  11. しつがいけん反射のしくみ。

ヒトの目の暗順応のしくみのついて、①錐体細胞、②桿体細胞、③ロドプシン、④ビタミンA、⑤レチナールの語句をすべて使って説明しなさい。

ヒトの目は暗いところに入ると最初に錐体細胞の順応が起き、次に桿体細胞の順応が起きる。後者では、桿体細胞中のビタミンAとレチナールがそれぞれオプシンと合成しロドプシンになることで起きる。

ヒトの目の遠近調節のしくみを述べなさい。

近くを見る時、毛様体が収縮してチン小帯が緩み、水晶体が厚くなる。逆に遠くを見る時、毛様体が緩んでチン小帯が収縮し、水晶体が薄くなる。ヒトは水晶体の厚さを調節することでピントを合わせている。

※ 近くを見る時のみ覚える。毛様体収縮 → チン小帯弛緩 → 水晶体厚

瞳孔の明暗調節のしくみを述べなさい。

瞳孔括約筋が収縮すると瞳孔が小さくなり、瞳孔散大筋が収縮すると瞳孔が大きくなる。

筋収縮について、①運動神経、②筋小胞体、③カルシウムイオン、④アクチンフィラメント、⑤ミオシンフィラメントの5つの言葉を用いて一連のしくみを説明しなさい。

運動神経からの刺激が筋細胞に伝わると、筋小胞体からカルシウムイオンが放出される。カルシウムイオンはアクチンフィラメントに結合し、ミオシンがアクチンに結合できるようになる。ミオシンはアクチンに結合すると、ミオシン頭部のATPアーゼによってATPを分解したエネルギーを使って頭部の形を変え、アクチンフィラメントを引きよせる。アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に滑りこんでサルコメアは収縮する。

※ 詳しい解説は『ニューステージ新生物図表』などを参照。視覚的に覚える。

高校生物でよく出題される記述問題をあげてみました。問題のすぐ下に解答があります。解答は必ずしも正確と言えないので参考程度に、教科書や資料集を確認して自分なりの答えを出してください。

解答にあたっては以下の文献を参考にしました。RNA干渉など最新の研究に関する問題は著作権の関係で答えを掲載していません。キーワードを並べるにとどめます。その他著作権にかかわる問題がある場合、また解答に著しい誤りがある場合は至急連絡をお願いします。

参考文献(ホームページ)

ニューステージ新生物図表(浜島書店)
Essential細胞生物学 原書第3版(B.et al. Alberts(著), 中村桂子/松原謙一(翻訳)、南江堂)
放射能とDNA損傷(原子力機構・先端基礎研究センター放射場生体分子科学研究グループホームページ)

次の記事

おすすめ参考書