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全国大学入試問題正解(生物)の評価と使い方(記述対策に最適な教材!)

全国大学入試問題正解(生物)は旺文社から出ている生物の問題集です。「全国大学入試問題正解」シリーズの生物版。国立から私立まで幅広い大学の去年分(一年分)の過去問を網羅しています。参考書というよりは問題集としての側面が強い。

項目 評価
使いやすさ ★★★★?
詳しさ ★★★
おすすめ ★★★★
レベル 上級
対象 高3

使いこなすためには基本的な知識がある程度必要

他の教科にも言えますが、旺文社の「全国大学入試問題正解」はその教科をある程度理解していることが大前提となるため、高校三年生以上の受験生が対象になります。

例えば筋収縮の問題であれば、解説において筋収縮の仕組みを細かく丁寧に説明しているわけでなく、あくまでもその問題の解答を適度な粒度で説明しているにすぎず、教科書のように「筋収縮とはこうでこうで…」と説明しているわけではありません。

だいたいの分野で基本的な知識はある、という段階でないと苦戦すると思います。ここで「基本的な知識がある」とは教科書や一般的な参考書の知識をすべて覚えているということではありません。例えばホルモンであれば、すべてのホルモンの作用を細かく覚えているということではなく、ホルモンの概略と代表的なホルモンについてある程度のことを知っているというくらいです。

高校生物ホルモンまとめ(フィードバック調節と血糖量・体温調節の機序ふくむ)

上のホルモンのページには最後に熊本大学の過去問を引用してのせています(解答つき)。この熊本大学の問題を半分くらい解ければ「基本的な知識はある」と言っていいと思いますね。

ただし「全国大学入試問題正解」を使うにあたって基本的な知識以上の応用力が必要かというと、意外とそうでもない。日本のほぼすべての大学(?)を網羅しているだけあって、難易度も非常にばらつきがあります。自分の今のレベルに合った大学を見つけて解いたり、自分の苦手な分野に絞って問題を解いたりすることは可能です。

苦手な分野をピンポイントでおさえたい人にダントツでおすすめ!

例えば「筋収縮」について勉強したとします。基本的な知識を身につけても、問題を数多く解かない限り、その知識を本当に手に入れたとは言えない。生物は

覚える → 確認 → 覚える → 確認

を問題を通してくりかえします。

この確認作業ですが、他の生物の問題集は一分野ごとの問題数が正直かなり少ないです。同じ旺文社の「問題精講」というシリーズはかなりいい問題集ですが、筋収縮を何問も扱っているわけではありません。いって三問が限界でしょう。

これは「問題精講」が悪いわけでなく、生物問題集としての宿命です。生物は物理や化学と違って分野が多すぎるので、一分野あたりの問題数がどうしても少なくなってしまうのです。

が、この「全国大学入試問題正解」はなんといっても問題数が半端でないため、筋収縮の問題だけでかなりあります。

そのため「あーDNAとか植物とかは完璧だけど、筋収縮だけはダメなんだよなー」という方にとっては、他の問題集より使い勝手がいいでしょう。

個人的におすすめしたい使い方

使い方としては二つあります。どちらも個人的に実践したものです。

  1. 苦手をつぶす専用の問題集として使う
  2. 記述・論述対策として使う

まず一つ目は前述のとおり「苦手つぶし」として使うというもの。

そしてもう一つは記述対策です。生物記述対策といえばもちろん駿台文庫の「生物記述・論述問題の完全対策(駿台文庫)」ですが、いかんせん問題数が少ない。これも駿台文庫が悪いからというわけでなく、生物というボリューム教科の宿命です。

高校生物必須の問題集 生物記述・論述問題の完全対策(駿台文庫)の評価と使い方
(↑は生物選択者必須の教材!)

ということで「全国大学入試問題正解」を「生物記述・論述問題の完全対策」の補完として使います。

また生物の記述は知識系の記述(バソプレシンについて説明せよ、とか)と実験系の記述(問題が用意した実験について実験結果を予想したり原因を考えたりする問題)の二つありますが、駿台の本はほぼ知識系の記述です。

実験系の記述は生物というよりは国語に近いタイプもありますが、そういった問題も「全国大学入試問題正解」はきちんと用意しています。

受験生物に必要な行間を読む力を身につけられる最適な教材

本書の解説は懇切丁寧な感じではありません。莫大な量の問題を揃えていながら、あの薄さ(2センチくらい?)なので当然といえば当然ですね。

しかしそこが生物に必要な読解力、論理力、そして調べる癖(調査力)になります。解説が丁寧すぎると、人は調べなくなり、考えなくなります。だからこそ基本から応用に進む段階で、いわゆる「わかりやすい教材」から本書のような「わかりやすいともわかりにくいともいえない教材」に移る必要があるのです。

本書をとりあえずやってみるとわかります。最初は教科書や資料集がそばにないとしんどいです。

でもその「しんどさ」こそが実は、生物という学問をマスターする上で最も必要な思考力と調査力を養うのだと思います。

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