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高校倫理「人間」の三つの定義(ホモ・サピエンス、ホモ・ファーベル、ホモ・ルーデンス)

高校倫理において「人間とは何者か?」は中心的なテーマです。パスカルの「人間は考える葦である」は一つの答えですが、高校倫理では次の四つを習います。

  • ホモ・サピエンス
  • ホモ・ファーベル
  • ホモ・ルーデンス
  • ホモ・シンボリクス

すべて「ホモ」という言葉が先頭についていますが、これはラテン語で「ヒト」を意味します。つまり「ホモ・A」とは「Aというヒト」すなわち「ヒトとはAである」ということ。

まとめ

言葉 性質 考案者
ホモ・サピエンス 英知人 考える リンネ
ホモ・ファーベル 工作人 (道具を)
作る
ベルクソン
ホモ・ルーデンス 遊戯人 遊ぶ ホイジンガ
ホモ・シンボリクス - 象徴する カッシーラー

ホモ・サピエンス

ホモ・サピエンスは、リンネという学者によって定義された言葉で、英知人と訳します。人間は他の動物と違って考えることができる、ということを強調した言葉です。

ホモ・サピエンスは生物学上の分類名として使われることも多く、「人間は英知人である」というニュアンスを持たない場合もあります。

ホモ・ファーベル

ホモ・ファーベルは、社会進化論の流れをくむフランスの哲学者ベルクソンによって定義された言葉で、工作人と訳す。

ホモ・ファーベル(工作人)としての人間は道具を作る存在です。

人は道具を作って生活を豊かにしてきました。最初は木の棒をうまく研いで火を起こし、石を削って石器を作り、鉄や銅から剣を作って戦争し、やがてさまざまな機械を作って今にいたります。

社会と経済の発展はまさに人間の「道具を作る性質」にもとづいています。

ベルクソンはノーベル文学賞を受賞しています。高校倫理では「エラン・ヴィタール(生の躍動)」という概念を唱えた人物としても習います。

ホモ・ルーデンス

ホモ・ルーデンスは、ホイジンガが定義した言葉で「遊戯人」と訳します。

遊戯という言葉が表すように、ホモ・ルーデンスとしての人間は「自由に遊ぶ生き物」です。

ホモ・シンボリクス

ホモ・シンボリクスは「象徴を使う人間」を意味する言葉で、カッシーラーによって考えられました。

象徴(シンボル)とは言葉や記号です。気持ちや考えを伝えるときに、人は言葉という抽象的な「象徴」を使います。これは人という生き物が抽象的な存在になっていることを表しています。

確認問題

英知人と訳される言葉はどれか?

  • ホモ・サピエンス
  • ホモ・ファーベル
  • ホモ・ルーデンス
  • ホモ・シンボリクス

英知人はホモ・サピエンスです。

ホモ・ファーベルとはどんな人間を意味するか?

  • 記号を操る
  • 知性を持っている
  • 道具を作る
  • 誰かと遊ぶ

ホモ・ファーベルとは、道具を作ったり使ったりする人間のことです。

ホモ・ファーベルは誰が唱えた考え方か?

  • ヘーゲル
  • ベルクソン
  • サルトル
  • フッサール

ベルクソンがホモ・ファーベルという考え方を提唱しました。

センター試験(2018年・第4問・問7)

引用の都合上、特殊文字を変えています。ふりがなは省略しています。

下線部に関連して、「ホモ・ファーベル」というベルクソンの人間観の説明として最も適当なものを、次の1〜4のうちから一つ選べ。

  1. 人間は、言語や記号、芸術などのように、様々な意味をあらわす象徴を使って、現実の世界を抽象的な仕方で理解する存在である、ということに着目したものである。
  2. 人間は、他の動物よりも発達した知性(理性)をもち、それを活かして高度で複雑な思考や推理を行うことができる存在である、ということに着目したものである。
  3. 人間は、目的をもって道具を作成し、それを用いて自然に働きかけ、自分たちで環境をつくりかえながら進化してきた存在である、ということに着目したものである。
  4. 人間は、自分たちを超越した力をもつ世界にまなざしを向け、神を信じて祈りを捧げつつ、宗教という文化を育んできた存在である、ということに着目したものである。

引用:センター試験「高校倫理」/2018年・第4問・問7

解答

正解は3。

ホモ・ファーベルは道具を作る存在です。3が正解となります。

1はホモ・シンボリクスの説明。ホモ・シンボリクスは記号を介して世界を理解します。

2はホモ・サピエンスの説明。ホモ・サピエンスは理性を用いて複雑なことをする。「理性」という言葉からホモ・サピエンスとわかります。

4は難しい。ホモ・レリギオーススという概念の説明。この問題は4があるせいで、結局消去法で選択できないようになっている。最初からホモ・ファーベルを知っていないといけない。

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