日本人の誇りと愚かさから日本の将来を考える|エッセイ

ドナルド・トランプがアメリカの大統領に選ばれたことは2010年代で最も重要な出来事だ。ヨーロッパの政策がドイツ以外で失敗したこと、2000年以降アメリカが国際秩序を維持できなかったこと、そして巨大企業の巨大化が進んだこと。この三つが労働者の絶望になり、世界は息苦しい閉塞感に包まれた。

※この記事はエッセイです。

日本の将来は日本人が決める。どのように選択するかは、この記事を読んでいる人とそうでない人のすべてが決める。選択は選挙と普段の生活から地道に行われる。自分の誇りを自覚して、反省するべき点を改善しない人は、誤った選択を肯定するようになるだろう。

誇り

その国や国民の誇りはさまざまなところに隠れている。日本は他国に長期的に支配されたことがなく、しかもほぼ単一の人種を抱えている。そして天皇家がいる。一人ひとりの生活はおおむね安全で、快適で、豊かである。

しかし日本人が誇りにするべき点はそれらよりも、自分の真面目な性格にある。ナポレオンは「勝利は忍耐にしかない」と言ったという説があるが、忍耐と真面目さは必ず勝利を導く。

大日本帝国憲法は1889年2月11日に交付された。その頃、日本は近代的な技術をほとんど持っていなかったが、近代化に遅れた中国はヨーロッパから屈辱的な支配を受けていた。憲法が交付される前から、真面目で進歩的だった一部の日本人の努力によって、外国の技術が日本に入り、文明は独自に発展しつつあった。彼らの勤勉な性格はすみやかに大衆に伝わった。多くの人は江戸時代から続く高い識字率と知性によって、近代化の波に苦もなく乗った。

20年で日本は工業化に成功したが、この速度で近代化を遂げた国は日本以外にない。この偉業は一人ひとりの真面目な性格によるものが大きい。

その後、日本は日本史上最も愚かな判断を下し、アメリカと戦争を始め、負け、一時的に占領された。主要な都市を破壊された日本は朝鮮戦争をきっかけに再び発展するが、この資本主義化は世界に決定的な影響を与えたとドラッカーは述べている。世界はアメリカの資本主義とソ連の社会主義に分かれたが、日本がアメリカの次に経済規模を持ったことで、資本主義世界は無事に維持されたと。

戦後の日本の発展も、明治初期と同様、日本人の真面目な性格から生まれた。彼らは勤勉に働き、政治家と官僚は勤勉に経済の舵をとった。

愚かさ

誇りだけを主張する人は愚かである。愚かさを自覚しない者は愚かであるからだ。日本人の誇りは愚かさと表裏一体にある。日本人の真面目な性格は、成熟した経済のどこかで歪みを強め、多くの人がその事実に気づきながらも指摘できない状況にある。これもまた愚かな点である。

真面目さは頑固、強情、平等主義と紐づいている。多くの社員は有給休暇をとることを自粛する。消費者は過剰なサービスを要求し、勤務時間はその受け手側に回って勤勉にサービスを提供する。多くの人間がテレビに映っている芸能人を真似るように「させていただく」と言う。

著しい発展は数えきれない過ちを生むが、真面目な人は正しいことを善と考える。これが日本の停滞の原因である。多くの人は、社会は一定水準まで達したから、これ以上の発展はみこめないと無意識的に考えているから、発展するよりも発展しないことで得られる正しさを金銭的に選ぶのである。

歴史をふりかえると、発展は破壊的に進むことがほとんどである。1950年代からの復興は、始まりが破壊しつくされた状況であり、失うものが相対的に少なかった。

当時はなにを作ってもそれなりにうまくいった、当時は労働者はいきいきと働いていた、などというのは嘘であり、当時の労働者を侮辱する表現である。当時も現在と同じように、大きな怪物が小さな弱者を食べて太る、経済の食物連鎖が非道に行われていた。貧しい出稼ぎ労働者が東京タワーを建てていた。戦後の発展は数えきれない人の数えきれない痛みとともにあり、その痛みの分だけ日本は成功したのである。

将来

誇りと愚かさは表裏一体である。まずはそれを自覚しなければいけない。真面目な性格は未成熟な社会で有効に働くが、成熟した社会では不幸を生む。それを自覚しなければいけない。

真面目な性格は快適なサービスと製品を作るが、それを生産するのは自分たちであり、自分たちが不幸に毎日8時間勤務することになる。すばらしいサービスを褒めることはとても簡単だが、悲惨なラッシュアワーと労働環境を非難することは難しい。なぜなら、そのラッシュアワーと労働環境によってすばらしいサービスが生まれているから。生産と消費が表裏一体であることと、物質的豊かさと精神的悲惨さが表裏一体であることを自覚しなければいけない。

人口分布は経済の将来をある程度予測する。2050年頃、日本の経済的地位は低下し、国際的な発言力は今のようにはないだろう。現在の日本は物質的豊かさに相対的に依存しているが、将来は精神的豊かさに依存する必要がある。そのために社会、経済、文化のあらゆる面で、互いの精神を尊重する姿勢が求められるだろう。

他人を利用する、他人を侮辱する、他人を裏切る発言と行動のすべては否定されなければいけない。それを肯定する姿勢も否定されなければいけない。

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