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社会契約説と自然権(ホッブズ、ロック、ルソー)|高校倫理

「国は人々の契約の上にある」とする考えを社会契約説という。社会契約説において国家ができる前の状態を自然状態といい、国家のない自然状態でも人々が最初から持っている権利を自然権という。

自然状態→(人々の契約)→国家

センター試験ではホッブズ、ロック、ルソーが出題される。三人が前提とした自然状態と自然権を覚え、それをもとにどんな国家を理想としたかを理解しよう。また現代社会が誰の思想を強く受け継いでいるかもチェック。

社会契約説をよりわかりやすく解説した記事:ホッブズ、ロック、ルソーの社会契約説(自然状態と自然権など)をざっくりわかりやすく解説

ホッブズ

ホッブズ
  • 自然状態 … 万人の万人に対する闘争
  • 自然権 … 生存権(自己保存のための権利)
  • 契約 … 自然権の放棄
  • 理想国家 … 絶対王政
  • 抵抗権 … 認められない

ホッブズにとって自然状態は戦争状態であり、「万人の万人に対する闘争」と表現される。また人の最上の欲求は自己保存であり、自然権は生存権であるとする。国家のない自然状態では、人々は生存権という自然権を持っているために、生きるためならなにをやっても許されると考えるあまり戦争が起きる。

そのため人々は契約し、自然権を放棄して、全員が服従しなければいけない絶対王政的な国家を作り、戦争状態を回避するべきだとした。

ロック

  • 自然状態 … 基本的に平和
  • 自然権 … 所有権
  • 契約 … 自然権の信託
  • 理想国家 … 議会中心
  • 抵抗権 … 認められる

ロックにとって自然状態は基本的に平和である。また生命、自由、財産などを所有する広い意味での所有権を自然権とした。国家のない社会では、強盗に財産を奪われるといった問題が起きて自然権が侵害されてしまう。

そのため人々は契約によって国家を作り、自然権を国家に「信託」する。この「信託」という言葉はとても難しい言葉なので、まずは「託する」とざっくり考えよう。また国家がこの「信託」に反して人々の自然権を侵害した場合、人々は国家に抵抗できるとした。この抵抗する権利を抵抗権という。

信託と抵抗権という概念から、国家には立法権を有する議会が必要であるとした。

ロックは国家権力の分立を主張した。これがモンテスキューの三権分立論につながる。しかし二人の権力の分け方は大きく異なる。

  • ロック … 立法権、行政権
  • モンテスキュー … 立法権、行政権、司法権

モンテスキューと違ってロックは司法権を扱っておらず、立法権を行政権の上に置いた。ロックのこの思想を統治二論という。

ロックがホッブズとルソーと決定的に異なる点は抵抗権にある。ホッブズとルソーが抵抗権を原則認めないのに対し、ロックは抵抗権を当然の権利としている。

自然権という概念が歴史上初めて明文化された文書は1776年に制定されたバージニア権利章典である。これはアメリカ独立革命で生まれ、同1776年のアメリカ独立宣言に影響を与えた。アメリカ独立宣言はロックの思想の流れをくみ、抵抗権を認めている。

ルソー

  • 自然状態 … 自由で平等な社会だったが文明化によって今は不平等な社会
  • 自然権 … 自由と平等
  • 契約 … 一般意志への服従
  • 理想国家 … 直接民主制
  • 抵抗権 … 認められない

ルソーにとって自然状態は自由で平等な社会だった。しかし社会の文明が発展し、私有財産制が導入されたことで社会は不平等になった。

人々は自由と平等を再び手に入れるため、自然権を放棄し、公共の利益を求める一般意志に服従する。またルソーは議会を認めず、直接民主制を説いた。

センター試験の問題(平成30年・第4問・問2)

下線部bに関して、ロックの社会思想の説明として最も適当なものを、次の1~4のうちから一つ選べ。

  1. 各人は、公共の利益を目指す一般意志に服従して、すべての権利を国家に譲渡するが、国家がこの一般意志を実現することで、各人の権利は保障されることになる。
  2. 知識や理論は、人間が環境によりよく適応していくための道具であり、我々は、創造的知性を用いることによって社会を改善し、理想的な民主社会を実現することができる。
  3. 各人が利己心に従って自分の利益を自由に追求すれば、おのずから社会全体の利益は増大するが、これは、「(神の)見えざる手」の導きによるものであると考えられる。
  4. 国家による権力の濫用を防ぎ、権力がその役割を公正に果たすためには、立法権や行政権(執行権)などが一定の独立性をもって互いを制約する、権力の分立が必要である。

引用:センター試験「高校倫理」/平成30年・第4問・問2

引用の都合上、記号を独自に変えています(特殊文字など)。

解答

正解は4。

1は間違い。一般意志という言葉を見た瞬間、ロックでなくルソーが浮かびますね。

2も間違い。ロックは「創造的知性」という概念から社会契約を唱えたといえない。創造的知性はアメリカのプラグマティズムに共通するポイント。「道具」という言葉から出てくる思想家は道具主義のデューイ。道具主義にとって知性は経済や社会を発展させる道具でないといけない。

3も間違い。「神の見えざる手」はアダム・スミスの思想。

消去法でも4しか残らない。権力分立はロックの代表的な思想。

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