高校政治 基本的人権
大学入試では基本的人権の尊重と公共の福祉による制限が焦点になる。私たちは自由に行動できるが、その権利は公共の福祉に反しない限り認められる。例えばお腹が減ったからといってお店の商品を勝手に盗んではいけない。基本的人権には以下のように分類される。
- 自由権
- 平等権
- 社会権
- 参政権
- 請求権
自由権
自由権はさらに三つに分類される。
- 精神の自由 … 思想の自由、信教の自由、表現の自由、学問の自由
- 人身の自由 … 苦役からの自由、被疑者と被告人の権利
- 活動の自由 … 居住と移転の自由、職業選択の自由
公権力は個人の思想と信教を制約できない。しかし公共の福祉に反する場合は制約されることがある。宗教団体は公共の福祉に反する場合、国より解散を命じられる場合がある。また日本国憲法は政教分離を原則としている。
また表現の自由は近年大きな関心を寄せられている。国家の著作物に対する検閲は禁じられている。
被疑者と被告人には弁護士を依頼する権利が与えられており、被告人が弁護士を依頼できない時は国が被告人に弁護士をつける。これを国選弁護制度という。
平等権
平等権の根拠は憲法第14条にあり、これを法の下の平等という。
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。華族その他の貴族の制度は、これを認めない。栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。(日本国憲法第14条より)
- 人種、信条、性別、社会的身分、門地により差別されない。
- 華族などの貴族制度は認められない。
具体的には家族生活における平等、教育機会の均等、選挙における平等など。
社会権
社会権は憲法第25~28条に規定されている。
- 第25条 … 生存権
- 第26条 … 教育を受ける権利
- 第27条 … 勤労権
- 第28条 … 労働三権 → ポイント
生存権についてはプログラム規定説というキーワードをチェック。プログラム規定説とは、憲法第25条はあくまで国の政治的な目標を示しているにすぎず、生存権の保障について具体的に決めたものではないという考え方。病気などで収入がなくなり国からの援助に頼る以外になくなったとしても、国がその人にどの程度支給すればいいか憲法第25条は明確に定めたわけではない。その人は国に具体的な保障を求めることはできない。朝日訴訟の最高裁判所の判決はこのプログラム規定説を採用した。
勤労権はさらに労働基準法という法律で具体化されている。賃金、労働時間、休憩などは細かく具体的に決められている。また障害者雇用促進法は国・地方公共団体・民間事業者に対し、障害者を一定の割合で雇用するように義務づけている。
憲法第28条に規定される労働三権とは、団結権、団体交渉権、争議権の三つ。ただし公務員(一般の公務員)には争議権が認められていない。
- 団結権 … 労働者が労働条件交渉のために労働組合を作ったり加入したりできる権利
- 団体交渉権 … 労働者が使用者と交渉する権利
- 争議権 … ストライキを行う権利
警察職員、消防職員、刑事施設職員、海上保安庁職員、自衛隊員には労働三権のすべてが認められていない。
参政権
国政に直接または間接に参加できる権利を参政権という。
請求権
- 憲法第16条 請願権 … 国や地方自治体に政治の希望を述べる権利
- 憲法第17条 国家賠償請求権 … 公務員の不法行為による損害の賠償を請求できる権利
- 憲法第32条 裁判を受ける権利
- 憲法第40条 刑事補償請求権 … 抑留・拘禁された被告人は無罪確定後その補償を請求できる
被疑者と被告人の権利
被疑者と被告人は弁護士を依頼できる。また被告人は弁護士を依頼できない時、国が代わりに弁護士をつける。また公務員(警察など)による被疑者への拷問は禁止されている。
- 弁護士依頼権
- 拷問の禁止 … 警察による暴力は固く禁じている
- 公平かつ迅速な公開裁判
- 自白の強要の禁止 … 強制された自白の証拠能力はない
- 事後法の禁止
- 一事不再理
事後法の禁止とは、実行当時にそれを罰する法がなかった場合、後でそれを罰する法ができたとしても罰することはできないというルール。憲法第39条。
一事不再理とは、確定判決事件についてこれを再び審議して無罪を有罪にしたり、刑罰を重くしたりすることはできないというルール。同じく憲法第39条。
自由権に関する最高裁判所の事例
入試では最高裁判所の判決なども合わせて出題される。
- 三菱樹脂事件
- 津地鎮祭訴訟
- 空知太神社政教分離訴訟
- チャタレイ事件
- 東大ポポロ事件
憲法
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高校政治 基本的人権0764
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天皇の国事行為まとめ01798
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立川反戦ビラ訴訟と表現の自由|高校現代社会0293