イスラム教の六信五行とシャリーア

イスラム教はアッラーを唯一神とする宗教で、預言者ムハンマドを開祖とする。ユダヤ教とキリスト教の影響を受けている。

イスラム教はユダヤ教のヤハウェとキリスト教の神をアッラーとする。つまりイスラム教においてユダヤ教、キリスト教、イスラム教の神はすべて同一である。

またユダヤ教のモーセ(エジプトで奴隷の扱いを受けていたイスラエル人を脱出させた人物)とキリスト教のイエスを預言者とする。

イスラム教は信仰と行動を結びつけている。例えばラマダーンの断食、利息の禁止などがある。金を貸して利息を得るという銀行の商行為は欧米やアジアで広く行われているが、イスラム圏の多くの国では利息を直接得る商行為が禁じられている(ユダヤ人が金融業で生計を立てていたことを相反する)。

参考ページ ユダヤ教の特徴とヘブライ(イスラエル)の民の歴史

イスラム教のルールと規範は

①六信五行 ②シャリーア(クルアーン含む) ③偶像崇拝禁止

をおさえよう。

六信五行

イスラム教徒の信仰と行動の原理を端的にまとめたものを六信・五行という。六信は六つの信仰、五行は五つの行動をさす。

六信

  • 神  … アッラー
  • 天使 … 神と人間の中間的な存在
  • 啓典 … クルアーンやモーセ五書など
  • 預言者 … ムハンマド、イエス、モーセなど
  • 来世 … 最後の審判後の世界
  • 天命 … 神によるこの世の定め

イスラム教にとって神はアッラーであり、唯一である。すべてのイスラム教徒はアッラーを信じなければいけない。

天使はキリスト教のガブリエルなどを含む天使。ガブリエルは大天使であり、イスラム教ではジブリールという。ムハンマドはメッカのヒラー山の洞窟において、ジブリールから啓示を受けて預言者として目覚めたとされる。

なおメッカはイスラム教最大の聖地であり、巡礼(五行の一つ)において行くべき場所とされる。

OldmapofMecca (ウィキメディア・コモンズ『メッカ』)

啓典はモーセ五書、ザブール、福音書、クルアーンの四つから成る。モーセ五書はユダヤ教とキリスト教の旧約聖書にある創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の五つ。ザブールはダビデの詩、福音書はイエスの福音のこと。

預言者はムハンマドのみならず、モーセやイエスなどの預言者も含む。イスラム教においてムハンマドは最後の預言者とされる。

来世は最後の審判後の世界のこと。イスラム教でも最後の審判という概念がある。

天命は神が定めたこの世の予定のこと。

五行

  • 信仰告白 … 「アッラーの他に神なし。ムハンマドはアッラーの使徒である」
  • 礼拝 … 1日5回の礼拝
  • 断食 … ヒジュラ暦9月のラマダーン
  • 喜捨 … 貧しい者を救済する
  • 巡礼 … メッカなどに行くこと

五行をイスラム教世界の言葉で次のようにいう。

五行 イスラム教での言葉
信仰告白 シャハーダ
礼拝 サラート
断食 サウム
喜捨 ザカート
巡礼 ハッジ

高校倫理のイスラム教の五行に「信仰告白」とあるが、「信仰告白」という言葉自体は信仰を告白するという意味であり、キリスト教にも信仰告白は存在する。

イスラム教の信仰告白はシャハーダ(言葉自体は高校倫理範囲外)であり、近年の報道でしばしば耳にする言葉である。

アッラーの他に神なし。ムハンマドはアッラーの使徒である。

この言葉をアラビア語で唱えることをシャハーダという。

礼拝はイスラム教においてサラート(言葉自体は高校倫理範囲外)という。サラートは1日5回行う。

ヒジュラ暦の9月(ラマダーン)の日の出から日の入までの間、イスラム教徒は断食を行う。これをサウムという。ヒジュラ暦とは、イスラム教世界で使われている暦法(イスラム歴)で、ユリウス暦622年(7月16日)をヒジュラ暦元年とする。

なおヒジュラは、ムハンマドがメッカからメディナに移ったことを意味する言葉で、日本語では聖遷という。

シャリーア

シャリーアはイスラム法とも言われる、イスラム国家とイスラム教徒の規範とルールである。イスラム圏では飲酒が禁じられているが、飲酒の禁止もシャリーアの一つ。

シャリーアは各人の生活と道徳について言及し、また行政や裁判といった国家レベルのルールについても言及するため、「六法全書と国際法を合わせたような性格(ウィキペディア「シャリーア」より引用)」という表現を受ける場合もある。

シャリーアは以下の四つに基づく。 注:この法源の分類は高校倫理の範囲外

  • クルアーン
  • ハディース
  • イジュマー
  • キヤース

偶像崇拝禁止

イスラム教は偶像崇拝を厳格に禁止している。アッラーを像にすることはできない。

センター倫理の過去問

センター倫理の過去問(問題のみ)を引用します。解説の著作権は当ページにあります。掲載の都合上、問題文を一部変えています。あらかじめご了承ください。

2016年(第2問の問2)

次のシャリーアについての説明の正誤の組合せとして正しいものを選べ。

ア シャリーアは、クルアーン(コーラン)などに基づき、豚肉を食べることや酒を飲みことなどを禁じるなど、食生活に様々な制限を設けている。

イ シャリーアは、結婚や相続など、ムスリムの生活全般の規則を定めており、シャリーアを守って生きることが神への信仰の体現であるとされる。

ウ シャリーアは、神と人との関係と人間同士の関係の両方を規定しており、神に対して果たす義務である五行には、礼拝、瞑想などが含まれる。

① ア 正 イ 正 ウ 正 ② ア 正 イ 正 ウ 誤 ③ ア 正 イ 誤 ウ 正 ④ ア 正 イ 誤 ウ 誤 ⑤ ア 誤 イ 正 ウ 正 ⑥ ア 誤 イ 正 ウ 誤 ⑦ ア 誤 イ 誤 ウ 正 ⑧ ア 誤 イ 誤 ウ 誤

解答 ②

シャリーアはイスラム法とも言われる。シャリーアまたはイスラム法は、イスラム教徒の生活と行動を定めるもので、主にクルアーン、ハディース、イジュマー、キヤースの四つに基づいている。

※ハディース、イジュマー、キヤースの三つの単語は高校倫理の範囲外。

アは正しい。シャリーアはクルアーンなどに基づいている。また豚肉と飲酒の禁止もシャリーアに含まれる。

イは正しい。シャリーアは結婚や相続などの細かい規則も含む。またそれを守ることが神への信仰の体現である。イスラム教はクルアーンやシャリーアを守ること自体がイスラム教への信仰につながる。

なお、多くの宗教はイスラム教のように信仰と行動を固く結びつけている。民族宗教の一つであるユダヤ教が律法の遵守を要求することを思い出そう。

参考ページ ユダヤ教の特徴とヘブライ(イスラエル)の民の歴史

ウは誤り。途中までは正しいが、五行に瞑想は含まれない。五行は信仰告白、礼拝、断食、喜捨、巡礼。

瞑想は仏教の八つの正しい修行(八正道)にある。

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