形容詞の活用(ク活用とシク活用)と語幹の特殊な用法(「瀬をはやみ」など)

用言の一つに形容詞がある。形容詞は物事の性質や状態を表し、動詞と同様活用する。つまり形容詞も語幹と活用語尾からなる。

形容詞=語幹+活用語尾

動詞は九種類の活用(四段活用、上二段活用、下二段活用…)があったが、形容詞は二種類である。ク活用とシク活用である。

また形容詞は動詞と違い、各活用について本活用と補助活用のパターンがある。普通は本活用を使うが、直後に助動詞が続くときは補助活用を使う。

形容詞の活用 ・ク活用とシク活用がある ・各活用について本活用と補助活用がある

ク活用

活用 本活用 補助活用
未然形 から
連用形 かり
終止形
連体形 かる
已然形 けれ
命令形 かれ

※◯は存在しないの意味

例えば「よし」という形容詞で活用すると以下のようになる。

活用 本活用 補助活用
未然形 よから
連用形 よく よかり
終止形 よし
連体形 よき よかる
已然形 よけれ
命令形 よかれ

「よし」では「よ」が語幹。

(現代風)例文

活用 例文
未然形 よからぬうわさを耳にする
連用形 よくて十点だ
終止形 今日の体調はよし
連体形 よき人に会った
已然形 もしよければ一緒に遊ばない?
命令形 -

今もよく使う「よからぬうわさ」という表現は「よし」の補助活用未然形である。「よし」という形容詞に「ぬ(助動詞「ず」の連体形)」がくっついて「よからぬ」となっている。

また「もしよければ」という言い方もある。この「よけれ」は本活用已然形である。已然形は「まだ起きていない」あるいは「仮定」を表すが、「もしよければ」はまさに「仮定」を表している。

シク活用

活用 本活用 補助活用
未然形 しから
連用形 しく しかり
終止形
連体形 しき しかる
已然形 しけれ
命令形 しかれ

例えば「ゆゆし」という形容詞で活用すると以下のようになる。

活用 本活用 補助活用
未然形 ゆゆしから
連用形 ゆゆしく ゆゆしかり
終止形 ゆゆし
連体形 ゆゆしき ゆゆしかる
已然形 ゆゆしけれ
命令形 ゆゆしかれ

形容詞の語幹の特殊な用法その一

「瀬をはやみ」という有名な言葉がある。これは「瀬」「を」「はや」「み」と分解できる。

「名詞(A)」+「を」+「形容詞の語幹(B)」+「み」

は「AがBなので」と訳す。つまり「瀬をはやみ」は「瀬(流れ)がはやいので」と訳す。

(現代風)例文 空を明み … 空が明るいので 月を丸み … 月が丸いので まとを小さみ … まとが小さいので 人を多み … 人が多いので

※明し(あかし) … 明るい(形容詞ク活用) ※丸し(まろし) … 丸い(形容詞ク活用) ※小さし(ちひさし) … 小さい(形容詞ク活用)

なお「名詞(A)」+「を」+「形容詞の語幹(B)」+「み」の構文のうち「を」は抜けることがある。つまり

「名詞(A)」+「形容詞の語幹(B)」+「み」

となる場合もある。意味自体は変わらない。

この「瀬をはやみ」構文は「み」がポイントになる。「を」は省略されても「み」は省略できないため、文章中に「み」が出てきたらこの構文を疑う。

上の例文からわかるように形容詞の語幹を形容詞の語幹と判別することはかなり難しい。「はや」という言葉も「は」と「や」の二つの助詞がくっついたものと読めなくもない。

しかし「み」という言葉は古文であまり出てこない。「み」の上に形容詞の語幹らしいものがあったら、この構文でほぼ間違いない。

形容詞の語幹の特殊な用法その二

「あなかしこ」という言葉がある。これは「あな」「かしこ」と分解できる。

「感動詞」+「形容詞の語幹」

は感動的に表現で訳す。「あなかしこ」は「ああ、おそれおおい」と訳す。

※かしこし … おそれおおい(形容詞ク活用)

(現代風)例文 あなめでた … ああ、すばらしい あなあや … ああ、不思議だ

※めでたし … すばらしい、喜ばしい(形容詞ク活用) ※あやし … 不思議だ、異常だ、不安だ(形容詞シク活用)

ちなみに「めでたし」と「あやし」はどちらも重要単語である。