古典文法 形容動詞の活用(ナリ活用とタリ活用)
形容動詞も物事の性質や状態を表し、動詞と同様活用する。つまり形容動詞も語幹と活用語尾からなる。
形容動詞=語幹+活用語尾
形容詞は二種類の活用があったが、形容動詞も二種類である。ただし形容詞のように本活用と補助活用というパターンはない。
形容動詞の活用はナリ活用とタリ活用である。
活用 | ナリ活用 | タリ活用 |
---|---|---|
未然形 | なら | たら |
連用形 | なり に |
たり と |
終止形 | なり | たり |
連体形 | なる | たる |
已然形 | なれ | たれ |
命令形 | なれ | たれ |
形容動詞ナリ活用
例えば「あはれなり」は形容動詞ナリ活用で以下のように活用する。
活用 | ナリ活用 |
---|---|
未然形 | あはれなら |
連用形 | あはれなり あはれに |
終止形 | あはれなり |
連体形 | あはれなる |
已然形 | あはれなれ |
命令形 | あはれなれ |
語幹は「あはれ」である。「あはれなり」は「しみじみとする」という意味。
形容動詞タリ活用
例えば「堂々たり」は形容動詞タリ活用で以下のように活用する。
活用 | タリ活用 |
---|---|
未然形 | 堂々たら |
連用形 | 堂々たり 堂々と |
終止形 | 堂々たり |
連体形 | 堂々たる |
已然形 | 堂々たれ |
命令形 | 堂々たれ |
タリ活用の形容動詞は漢語が多い。「堂々」「老老」「忽忽」といった漢字二文字の言葉に「たり」がくっついたものが大半である。平安時代にも使われていたが、タリ活用よりはナリ活用のほうが比較的多く見られる。しかし近代以降、特に明治から大正にかけての文学作品はタリ活用の形容動詞がかなり多く見られる。
例えば森鴎外の『舞姫』を見てみよう。以下、森鴎外『舞姫』より引用(森鴎外の作品は著作権が切れている)。
- 余は模糊(もこ)たる功名の念と、檢束に慣れたる勉強力とを持ちて、忽ちこの歐羅巴の新大都の中央に立てり。
- 四階の屋根裏には、エリスはまだ寢(い)ねずと覺ぼしく、烱然(けいぜん)たる一星の火、暗き空にすかせば…
「模糊」は「はっきりしないさま」、「炯然」は「明るいさま」。
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