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連載小説「ペンは剣よりも強し」第1話:通知(その1)

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登場人物

坂本真一郎
小川慎吾
加藤亜紀 
池内玲香

※当作品は実話をもとに書かれていますが、作品そのものはフィクションであり、「坂本真一郎」以外の登場人物は架空の人物です。

本編

英雄になりたいと思っていた。彼は本棚から図鑑を出して、アインシュタインとニュートンの顔を見てばかりいた。アインシュタインが何をしたかまったく知らないくせに、自分はアインシュタインにならないといけないと考えていた。

「はじめ!」

小学校の教員はこの日もハリのある声を上げて、生徒たちに百問の計算を解かせた。他の友人たちは苦戦しているが、その中に一人できる男がいた。小川慎吾という小さい少年は、彼の数少ない友だちだった。計算は速いが、実直で人からよくだまされていた。後ろの席の不良が慎吾の解答用紙をうまく奪っているところを見ると、彼らの斜め後ろにいる不潔な男、坂本真一郎はティッシュをくるくると丸めてどこかに投げた。

真一郎は嫌いと好きの区別がついた子どもだった。縦長の計算ドリルは特に嫌いだった。ドリルはくだらないし、やっても意味がないとわかっている。他の教科書と形やサイズが違うのも気に食わない。しかし担任の先生が怒った時に吐きだす臭い息はもっと嫌だった。両方の不快を天秤にかけた結果、さっさと終わらせてみんなが終わるのを待つことにした。

不良が慎吾の答案をせっせと書き写している様子を見ていると、変なものを食べて腹を壊しているような不快感がわき起こってきた。

(あのクソやろう…またカンニングしてやがる)

慎吾もおそらく気づいていたが、文句を言うことはできないはずだった。カンニングはいつものことだが、誰かが誰かのカンニングをしている光景を見るたびにイライラした。先生のほうを見ると、のんきに何かの採点をしている。

クラスを見渡すとめちゃくちゃだった。テスト中なのに四隅の一部にいる男子たちはおしゃべりをやめないし、席を立っている者や寝ている者もいる。再び慎吾のほうを見ると、怒りがむなしく広がった。

………。

「終わり! 解答用紙を回収するから、後ろの人は前の人にテストを渡しなさい」

真一郎は先生が大嫌いだった。この先生はいじめが蔓延するクラスをコントロールできず、一部の父母はいじめを放置しているクラスに憤っていた。

(カンニングも注意しないで偉そうに)

慎吾と不良を見ると、視界のすぐ近くに寝ている生徒がいた。不良はすでに慎吾に解答用紙を渡していて、慎吾はその上に自分の解答用紙をのせていた。真一郎は席を立って不良に近づいた。

「お前カンニングしただろ」

声が少し震えていた。真一郎は他人の視線や注意を無視して、自分の怒りをそのまま行動に移す悪い癖があった。生徒たちはいっせいに弱虫な少年を見つめた。不良は舌打ちをして真一郎をにらみつけた。

慎吾は慌てて彼と不良の間に割って入り、「そんなことないよ」とぶつぶつ言って周りに謝っていた。彼は何を謝っているのだろうと思った。真一郎は慎吾のこうした卑屈さがたまらなくつらかった。

どうして彼はいつも謝るのだろう? 誰に謝っているのだろう?

不良は慎吾の手をふりはらって真一郎の肩をつかみ、片足を蹴り上げた。

「いて!」

「うぜえんだよ!チビ!バカ!ボケ!」

不良は真一郎の席に行って、まだ回収されていなかった解答用紙を半分に割いた。ざあーという紙が割かれる音は爽快で痛快だった。真一郎は足の痛みをこらえながら、不良の手から解答用紙を奪いかえして怒鳴った。

「チビって言うんじゃねえよ!お前バカだろ!俺よりずっとバカだろ!だからカンニングしたんだろ!」

「バカ!うぜえんだよ!」

二人の取っ組み合いが始まったところで、教員が面倒そうに二人の体を離し、「バカ!」と言った。

「教室で喧嘩するな!みんなの迷惑になるだろ!」

………

放課後、真一郎は加藤亜紀という同級生と竹馬で遊んだ。二人は同じ身長で、朝礼の時はいつも隣に座っていた。席替えでも近くになることが多く、女の子の中では一番仲良しだった。この頃クラスは竹馬ブームで真一郎はこの女の子から竹馬を教わっていた。

「片足がついてから片足を出すとコケるよ」

彼は竹馬で何度もコケながら、昼間の出来事をしつこく思いだしてイライラした。コケてイライラし、思いだしてイライラする。「あーもう!」といらだった声を上げるのも無理はなかった。

喧嘩やいじめが絶えないクラスでこうしたストレスは日常だったが、他の学年や学校は平和だという話を聞いていたせいで、やりきれない気持ちや理不尽な感じがいつもそばにあった。

そこへ池内玲香という大柄な少女がきた。学年で一番身長が高く、男子よりも力強い雰囲気があった。彼女は亜紀よりずっと高い竹馬に乗って、夕焼けを背にさっさと歩いていた。二人に近づくなり「サカシン、テスト用紙を破られて大変だったね」と言って、ケラケラと笑った。玲香は人を少しバカにしたように笑うところがあった。

「あいつカンニングしてた。いつかぶっ飛ばしてやる。クソ!」

「サカシン、そこドロだよ」

と玲香が言うと、彼の竹馬は朝に降った雨が少したまってできたドロに入って、うまく抜けなくなった。とっさに竹馬から飛び出して、無事両足で着地した。

「ねえねえ、サカシンってさあ、最近怒りっぽいよね」

と玲香が続けた。実際そのとおりだった。しかしそれは彼に限らなかった。ほとんどの生徒がいじめに参加したり、いじめられたことを根にもって復讐したり、殴ったり蹴ったりしていた。目の前にいる女子二人は幸運にもそうしたトラブルと無縁な世界にいたから、彼や慎吾が受けているストレスをあまり理解できなかった。問題はいつも同じ人間たちが作っていた。

「あいつらが悪い。カンニングするし、殴るし、どうしようもない。なんなんだよ、うちのクラスだけじゃん!」

玲香は同情を装って言った。

「安行たちにずっといじめられて、いつか仕返ししたいんだよね」

安行というのはこの学年で仕切っている少年だった。安行はグループで行動し、少し弱そうな者を見かけるといじめ、殴り、服を剥ぎ取っていた。この問題はすぐに父母会の話題になったが、半年が経っても解決する見こみはなかった。

不思議なことに、真一郎と亜紀がいるクラスはいじめられた者がいじめる側になることがよく起きた。慎吾もまた、自分をいじめた者に仕返しをしようと思って、安行グループの一人と協力して人をいじめていた。それでも慎吾は真一郎にとってかけがえのない友だちだった。

亜紀が声を上げた。

「もしサカシンが人をいじめたら、私はサカシンの友だちをやめるよ」

亜紀は不思議な正義感を持っていて、しばしばこうした脅し文句をたれていた。真一郎にとって亜紀は安全地帯で生きていくために必要な存在であり、今は友だちをやめるわけにいかなかった。

「人なんていじめるわけないだろ。バカ」

「だったらいいけど。私、人をいじめるような人って大嫌い」

「みんなそうだよ。でも自分を殴った人をいじめて悪いの?」

「悪いよ。同じになっちゃうじゃん。とにかく、もし人をいじめたら、私、本当に友だちをやめるから」

真一郎はイライラしながら言った。

「いじめられたのはこっちだよ!いじめてなんかいないじゃん!」

「そういえばそうだよね」

と言って亜紀は笑った。

続き

第1話:通知(その2)はじめての模擬試験

あとがき

体験をもとにしているので、短い時間でさっと書くことができました。くりかえしますが、登場人物はすべて架空の人物です。

ただ、学級崩壊といじめの横行は事実でした。私の同級生たちはみんなこの地獄を覚えているでしょう。フィクションにする関係で学年をずらしていますが、何年にもわたって学級崩壊は続きました。

この作品は家庭、学校、塾という三つの環境が出てきます。ほとんどの受験生も同じですね。中学受験は小学校の環境に大きく左右されるため、小学校に入学する前の子どもがいる方は学区の治安を最初に調べることをおすすめします。

この話で「いじめたら、私はあんたの友だちをやめる」というセリフが出てきますが、これは実際に言われた言葉で、今も記憶に残っています。当時はその正義感にイライラしましたが、その言葉があったからこそ悪い集団に入らずにすんだのかもしれません。

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