受験生必読!第2話「中学受験という競争」その2(週末テスト)

この作品は「ペンは剣よりも強し」という連載小説の第二話になります。「ペンは剣よりも強し」は実話をもとに書かれた中学受験物語です。中学受験生だけでなく、高校受験や大学受験を控えた学生、またはそのご家族の方はぜひ最後までお読みください。この連載小説では受験のテクニックもいくつか出てきます。

「ペンは剣よりも強し」全話目次(第1話〜)
第2話「中学受験という競争」その1(はじめての授業)
第2話「中学受験という競争」その2(週末テスト)
第2話「中学受験という競争」その3(いじめる人間、いじめられる人間、どちらでもない人間)

本編

……

週末、朝の十時から昼の十二時までの二時間で国語と算数の試験が行われた。週末テストは学校の授業でよくあるようなミニテストとまったく違い、七月末に受けた入塾テストのように本格的で、会場は緊張感があった。

会場は普段の授業が行われる建物にあるが、教室そのものはフロアが異なり、普段の倍近くの人数が一堂に会していた。みんな青白い顔をして、口をきかなかった。すでに友だち関係になっている人もいるが、黒板の近くに強面の試験監督が二人立っていて、気軽に話ができる状態でなかった。

なによりもこのテストで次の席順が決まることをみんな知っていたので、ほとんどの生徒は塾から配布されていた漢字の参考書とプリントに目を通していた。ペラペラ話す余裕はもちろんない。

(漢字の参考書を忘れた…)

漢字の参考書を忘れた真一郎は、なにもすることがなくぼうっとしていた。試験開始十五分前に着いてから、問題用紙が配布される直前まで、彼はシャープペンシルと消しゴムをいじりつづけた。

隣の生徒が必死に漢字を書いている。

(この中で一番国語ができないのに、この中で一番なにも準備してない。なにやってんだろ俺…)

問題用紙が配られると、急に緊張感がわきおこってトイレに行きたくなった。

(くそ、さっき行っておけば…)

トイレに行きたいと言うために手を上げようか。しかしすでに問題用紙は配られて、今そんなことを言える状態にない。漢字の参考書を持ってこない、トイレに行くのを忘れる。自分に腹が立ってどうしようもなかった。試験監督は「カンニングは絶対にしないこと。した者は退塾させる場合があります」と厳しく念を押した。

真一郎はだんだんと塾を理解しはじめていた。学校と塾は似ているようで全然似ていない。自分のクラスだけかもしれないが、学校は基本的に不正が許される。人をいじめても、殴っても、カンニングしても許される。しかし塾でそうした不正が出てくる余地はなかった。

なぜなら、みんな自分のことしか考えていないからだ。入って一週間しか経っていないのに、塾が用意した席替えという競争を、みんなが深刻に受けとめていた。後ろのほうに座ることがどれだけ屈辱的か、みんなが理解していた。SクラスとAクラスの使用教材が異なることも、Aクラスの生徒にとって腹立たしいものだった。

中にはそんなことどうでもいいと思っている生徒もいるようだったが、彼ら彼女らは最初から勉強する気を持っていないようだった。

真一郎は国語の試験が始まる直前、木曜日の授業の後で話した数人の生徒を思いだした。彼らは席順などどうでもいいと思っているようだったが、よく考えると自分はその人たちよりも勉強ができないわけである。

自分は家で必死に勉強しているのに、勉強なんてどうでもいいと思っている人に負けている。小川慎吾もそうだ。おそらく自分より勉強していないが、自分より国語ができる。加藤亜紀も自分より言葉や漢字を知っていて、国語の成績はいつもいい。二人より算数ができる自信はあったが、国語で大きく差をつけられるから、自分はいつも二人より下になる。

「はじめ!」

不快な劣等感がよみがえるなか、国語の試験が始まった。入塾テストと同様、問題は二問。物語文と説明文だ。物語文はあいかわらずつまらないときている。しかしこの文章に出てくる単語は読めたし、内容も少しばかり入ってきた。

入塾テストよりだいぶ簡単な試験だった。

……

国語の試験中、いよいよトイレに行きたくなってきた。

(もうだめだ…)

真一郎は思いきって手を上げた。

「あ、あのう」

と口にしてしまった。みんなの鉛筆の動きが一瞬だけ止まったような気がした。だが、すぐにもとに戻った。試験監督が席に近づいてきた。

「どうしました?」

「トイレに行きたいんですが…」

「いいですよ」

席を立つと試験監督にトイレまで誘導された。トイレは会場から離れた廊下の奥にあり、薄暗かった。試験監督はトイレの扉を開けて言った。

「カンニング防止のためにトイレの外のここで待っています。早くすませてください」

「は、はい!」

…その後、彼はうつむき加減で席に戻った。試験時間中にトイレに行くという愚行をしてしまったことが恥ずかしくてどうしようもなかった。鉛筆をとって教室の時計を見ると、あと十分しかない。しかし解答用紙は半分も埋まっていない。物語文をしつこく解いてしまったせいで、説明文はまだ文章すら読んでいない。

(くそ…もういやだ)

どうして自分は文章を読む速度がこうも遅いのだろう。漢字がわからないせいか、単に頭が悪いのか。

シャープペンシルをカチカチと鳴らす周りの同級生がひどく憎らしかった。カチカチという音を気にすれば気にするほど文章に集中できない。そのうちにだんだん気持ち悪くなり、頭が真っ白になっていった。

ゴーン、ゴーン…。

チャイムが鳴った。試験監督は「終わりです」と言った。

「ペンは剣よりも強し」全話目次(第1話〜)
第2話「中学受験という競争」その1(はじめての授業)
第2話「中学受験という競争」その2(週末テスト)
第2話「中学受験という競争」その3(いじめる人間、いじめられる人間、どちらでもない人間)

あとがき

はじめての週末テストの話になります。なにも準備しないでテスト会場に行ってしまう、トイレをすませないで試験に入ってしまうという「愚行」で、劣等感と恥ずかしさでいっぱいになっている主人公。たぶんこれを読んでいる受験生も、どこかで同じような経験をしていると思います。

試験前は必ずトイレをすませて、ダメもとで教科書やノートを持参して、最後の最後まで知識を頭に入れて粘りましょう。

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