小野妹子物語1-1|山田まや

 体育の時間は最悪だ。今学期の種目はサッカー。  サッカーだろうがバレーボールだろうが卓球だろうが、運動能力ゼロの者にとって体育が地獄であることに変わりはない。

「おい小野! ボールとれよ!」

 今はチーム対抗の試合中で、小野妹子はゴリラチームのディフェンスを務める。

「あっ!」

 あるチームメンバーが叫ぶ。

「小野! てめっなにやってんだっ! 早くパスしろパス!」

 視線を左に右に動かすと、赤いユニフォームを着た敵が全速力でくる。  蘇我毛人という勉強も運動もできる少年だ。

「小野ぉおおお! 早くパスしろって言ってんだろうがあああ!」

 と叫ぶゴリラ。  三年一組のボス的な存在で、同級生のみならず上級生にすら畏怖される。

「ごめん!」

 ボールを渡すべき相手は見つからないが、ゴリに殺されないためにパスをしようと決意する。  足をふり上げ、ボールを蹴る。  カスッ。無様に尻をついて転ぶ。  その隙に毛人はボールを奪い、仲間にパスする。

「小野ぉおおお…。てめえ…。後でぶっ殺す!」

 結果は三対四でゴリラチームの負け。  チャイムが鳴った。  体育の授業が終わると、ゴリがチームメンバーを連れて妹子の前に現れた。  腕を組み、鬼のような面を見せる権六は、内なる怒りを冷ややかな言葉に表した。

「次からお前はベンチだ。試合に出たら殺す」

 妹子は悔し涙をこらえた。  ゴリたちが去り、同級生が校舎に戻ると、一人になった妹子は鼻をすすって泣き出した。

© 2016 Yamada Maya