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ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは|在原業平朝臣|小倉百人一首

ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは

在原業平朝臣古今和歌集』秋下(二九四)『小倉百人一首』一七

現代語訳

遠い神々の時代でさえも聞いたことはありません 竜田川が 唐紅色に 水を絞り染めにするというお話は

注 ちはやぶるは枕詞なので訳さない

文法

ちはやぶる神代もきかず竜田川

ちはやぶるは神代(神々の時代、神武天皇までの時代)にかかる枕詞です。

竜田川は奈良県竜田山の近くを流れる川で、今でも紅葉が有名。

からくれなゐに

「からくれなゐ」は「から(唐)」「くれなゐ(紅)」で、唐は当時の中国の名。唐を接頭語として用いて、その言葉を美しくする技法があります。今でも唐紅色という言葉はあります。

くくるとは

くくる…絞り染めにする

絞り染めとは、世界中で昔から使われてきた染の技法で、一部を縛ったうえで布を染めること。

「くくるとは」の「とは」は現代でも使われる「そんなに食べるとは」「こんなに悪いとは」の「とは」。倒置法で使う。

作者

在原業平(八二五~八八〇)

「ちはやぶる…」や「…言問はむ…」の和歌で有名な歌人で、平安時代の六歌仙の一人とされます。晩年左遷されてたどり着いた隅田川の近くで「言問はむ」の詩を詠んだことから、現在の東京都台東区、浅草付近を通る道は言問通りと名づけられました。

また伊勢物語の主人公は在原業平だという説があります。

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