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連載小説・第3話「新しい順位」その2(裏切りの予感)

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連載小説「ペンは剣よりも強し」は実話にもとづいて書かれた受験物語です。合格は不可能と言われていた劣等生が、いくつもの奇跡を乗り越えて開成中学校に合格するまでの道のりです。すべての中学受験生、高校と大学を受験する学生、学校・教育関係者はぜひ最後までお読みください。勉強のできない生徒が合格するというストーリーはフィクション・ノンフィクションともにありますが、この小説以上の逆転劇は日本に存在しないでしょう。

これまでのストーリー

「ペンは剣よりも強し」全話目次(第1話〜)

第2話「中学受験という競争」その1(はじめての授業)
第2話「中学受験という競争」その2(週末テスト)
第2話「中学受験という競争」その3(いじめる人間、いじめられる人間、どちらでもない人間)

第3話「新しい順位」その1(井の中の蛙)
第3話「新しい順位」その2(裏切りの予感)

本編

……

入塾テストを合わせれば、これが三回目のテストになる。先週も受けて少しは慣れたが、試験会場に行く足は重かった。前回はたまたま算数の成績がよかったが、今回もうまくいくとは限らない。算数がダメだったら二教科の合計点は一気に下がり、席順は再びビリに戻るかもしれない。

(そうか、結局国語がダメだからダメなんだ)

ただし今回は国語を相当準備してきた。授業で教わったことは覚えたつもりだし、文章も何回も読んだし、漢字も暗記した。テストで同じ文章が出るわけでないが、習ったことを基本にした問題が出るから、準備すればするだけ点が伸びるはずである。

会場に着くと、先週と同じ試験監督が黒板の隣に立っていた。あいかわらず威圧感があり、会場に重い空気を作っていた。歩きながらクラスを見渡すと、内野の顔が見えた。しかしほとんどの生徒は誰が誰だかわからない。

…国語の試験が始まると、先週よりもつまらない文章で頭がくらくらした。この時の主人公の気持ちを次のうちから選びなさい。こうした問題は実に嫌だった。人の気持ちは人それぞれが感じることで正解はない。

(やっぱり最初は説明文を解こう…)

説明文はコンピューターの話だった。コンピューター。父のWindows95を触って感動していたせいでコンピューターには興味があった。コンピューターにはマウスがあり、キーボードがあり、モニターがある。トランプのゲームをすることも、ペイントでイラストを描くこともできる。家にあるコンピューターは動きがとろいので、ちょっとしたことで動きが遅くなるが、それでも素晴らしいものだった。

コンピューターで遊んでいる時を思いだしながら文章を読んでいると、内容がまったく入らなくなった。視線は文章を読んだつもりでも、頭は文章を入れていない。だから何度も前に戻ることになる。

「そこまで!鉛筆を置いてください」

(やばい…今回も解答用紙が半分真っ白)

前から流れてくる解答用紙の束に自分の解答用紙を置く。その瞬間、真一郎は目を奪われた。

(伊藤…)

伊藤という名字が見えた。解答用紙を送る前、自分の解答用紙をずらして下にある解答用紙をのぞいた。きれいな字で解答用紙にすべての解答が埋まっていた。

(まさか伊藤ってあの伊藤かよ…)

「そこ!早く解答用紙を前に送って!」

試験監督がぼうっとしている真一郎を叱った。慌てて解答用紙を前に送ったが、頭は伊藤の解答用紙でいっぱいだった。顔を動かさないで視線を横にずらした。

(俺の後ろに座っているのは、まさかこの塾でトップの伊藤なのか?)

答えがびっしり埋まっていた解答用紙と、自分の無残な解答用紙。越えられない壁がここにあった。わずかな距離にいるのに、果てしなく遠い場所にいるように感じられた。東京中学校に入るのはこの校舎から三人ほど。自分はあの解答用紙を作るような人間と戦っているのか。そう思うと足がすくんだ。

……

福沢の事件後、真一郎がいたクラスはしばらく静かになった。この日、真一郎は夏木守の家に遊びにいった。今流行りのゲームで遊べると聞いて、喜んでついていったのだ。そのゲームは緑色のイルカのようなものが卵を生みながら洞窟を探検するというものだ。洞窟にはたくさんの敵がいて、敵はイルカの卵で倒す。卵をぶつける時の操作がとても面白かった。

守と遊んでいると、守の母と祖母がリビングにやってきて、お茶とケーキを出してきた。ゲームをやめてみんなでケーキを食べることになった。

「あなたが坂本くんね。この前はこの子がお世話になったようで」

守の祖母は頭を下げた。真一郎は困惑した。発端は守かもしれないが、その後教室をめちゃくちゃにしたのは自分が福沢と格闘したからだ。

「結局なにもできませんでした。池内が女子たちと一緒に、福沢の教科書をゴミ箱に捨てようとしたんです。それで福沢が…」

「いいんですよ。坂本くんが最初に止めなかったら、いつまでもこの子はひどいめにあっていたと思いますよ」

守の母はため息をついて言った。

「昨日父母会でも話になってね。学校がどんどんおかしくなっているので、先生にもなんとかしてもらいたいと言ったんだけど…。坂本くんはなにか嫌なことされてない?」

「だいじょうぶです」

守の祖母が言った。

「なんにしても、勇気は素晴らしいことですよ。一番大切なことですよ。守も強くならないとダメだよ」

守はバツが悪そうにうなずいた。守の母が真一郎にたずねた。

「この子から聞いたんだけど、中学受験をするんだって?」

「はい」

「がんばってね。小学校があんな状態だからなおさら大変でしょう」

真一郎は黙ってうなずいた。

…その後、公園で守とキャッチボールをした。平和だった。こんな時間がずっと続けばいいと心の底から思った。そういえばどうして勉強なんてしているんだろう。エジソンは子どもの頃、それほど勉強したわけでないという。エジソンは変わった実験をやって周囲を困らせていたが、勉強そのものは嫌いだったらしい。しかしエジソンを超える発明家はいない。

「将来なにになりたい?」

と守は真一郎にたずねた。

「アインシュタインみたいな科学者」

「アイン…って誰?」

自分はアインシュタインになりたいのか?おそらく本当のところはアインシュタインでもエジソンでも、ルーズベルトでもシェイクスピアでもよかった。この世にはすごい人がたくさんいて、自分もすごい人になりたいとただなんとなく思っていた。

しかし今は、すごい人になる前に、こんなふうに平和な時間を過ごすべきだと思った。

……

一見静かになったクラスで、一人の女の子が不登校になりつつあった。その子はかなり内気で、男子からも女子からもいじめられていた。人をいじめることが当たり前になっていたクラスで、いじめる側にもいじめられる側にもなっていない女子を見つけることは難しい。だが、その子は池内玲香や加藤亜紀に話しかける勇気も持っていなかった。だから完全に孤立していた。

真一郎は信用できるこの二人にその子の話をしようと思ったが、なんとなくできなかった。女の子のグループと人間関係が男のそれよりも複雑で、もろいことを知っていた。その子と玲香をつなぐような真似をしたら、今は強気の玲香もなにかあるかもしれない。

その子は金本という。

この日、金本は登校していた。金本は真一郎の左隣だった。右隣は亜紀で、真一郎はいつも亜紀とばかり話をしていた。亜紀は福沢の事件があった日、風邪でたまたま休んでいた。

「サカシンは弱いんだから、あんなやつに逆らったらダメだって」

昼休みで教室には男子はほとんどいなかった。念のために教室を見渡すと福沢たちはいなかった。

「でも偉いよ!でも玲香ちゃんはもっとすごいね」

「あの時はよく三人とも協力したな。どうしてだろう」

教室の隅のほうに玲香に協力した三人のうちの二人がいた。一人は田村由衣という子だ。音楽室でいつも隣に座っているからどんな性格か知っていたが、あの状況で福沢に反抗するようなタイプに見えない。

「玲香ちゃん、カリスマ性があるから」

「カリスマ…どういう意味?」

「あんた本当、日本語もわからないで中学受験なんてできるの?」

「どういう意味だよ」

「うーん。なんと言えばいいかな」

「お前もわかんないんだろ!」

「なんですって!?簡単な言葉だから説明が難しいんだよ!バカじゃないの!?」

…この頃、男子は慎吾や守などを除いてほとんどがいじめる側に回っていた。実際はいじめる側でありながら、いじめられる側でもある。いじめられるのが怖いから、人をいじめていることを楽しんでいるふうを装う。そして昼休みはいじめが活発になる時間であり、平和に過ごすには女子たちがいる教室でおとなしくするのが一番だった。

だから自然と隣にいる亜紀と話す時間は長くなり、反対側にいる無口な金本が気になってしょうがなくなる。

何度も金本と亜紀を友だちにさせようと思った。しかしできなかった。友だちになるというのは、本人たちの気が合うか合わないかだから。しかも金本は本当に無口で、亜紀が親切に話しかけたところでまともな会話が続くか疑問だった。

今しがた会話にあがった田村が二人に近づいてきた。

「亜紀ちゃん。今度一緒に文房具屋に行かない?駅の反対側にあるんだって」

「そうなんだ〜」

亜紀と田村が会話を始めると、真一郎はやることがなくなった。机の引き出しからノートを出して、明日出す予定の宿題を始めた。宿題はいつも昼休みにやることにしていた。家に宿題を持ちかえると母はひどく不機嫌になった。家の勉強は塾の勉強であり、学校の勉強でないと毎日言っていた。

母はそもそも学校と担任の先生に不信感を持っており、「学校の宿題なんてやらなくていい!」と言うこともあった。しかし宿題をやらなかったら今度は先生から怒られるので、結局宿題は母に見つからないところでやるしかない。

「宿題めんどくせえな。こんな問題やってなんの意味あるんだろうね」

真一郎は何気なく金本にたずねた。

「金本さんもそう思わない?百マス計算とかバッカじゃないのって思わない?」

「…」

金本は黙っていたが、少し笑って体を少し揺らした。なにを言いたいのかわからないが、反応してくれることはうれしかった。

「塾に通っているんだけど、毎週テストがあって大変なんだよ」

「が…」

なにかをしゃべろうとしていた。真一郎はうなずいて、二人の距離を近づけた。

「がんばって…ね…」

真一郎はすぐに距離をとって、腕をふり上げた。

「俺は絶対に受かってみせる。日本一の東京中学校に合格するぜ。その後は東京大学に入るのだ!」

亜紀はいつの間にか田村とわかれて、頬杖をついて少年の熱い話を聞いていた。

「すげーじゃん。東京中学校に行って、東京大学に行って、次は?」

「NASAか国連に決まってんじゃん。NASAに入って土星を研究するんだよ。それか国連に入って国連事務総長になる」

「毎回夢が変わるよね」

「別にいいだろ」

亜紀と一緒に笑い、反対にいた金本のほうにも向いて笑った。金本は少し無理した感じで笑った。

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第2話「中学受験という競争」その1(はじめての授業)
第2話「中学受験という競争」その2(週末テスト)
第2話「中学受験という競争」その3(いじめる人間、いじめられる人間、どちらでもない人間)

第3話「新しい順位」その1(井の中の蛙)

あとがき

金本は真一郎の周りにいる人間関係を大きく動かし、食う側と食われる側、そしてそのどちらでもない側にいる人間のバランスが崩れていきます。

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