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連載小説

中学受験物語:第3話「新しい順位」その3(秋のクラス替え)

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連載小説「ペンは剣よりも強し」は実話にもとづいて書かれた受験物語です。合格は不可能と言われていた劣等生が、いくつもの奇跡を乗り越えて志望校に合格するまでの道のりです。

これまでのストーリー

「ペンは剣よりも強し」全話目次(第1話〜)

第2話「中学受験という競争」その1(はじめての授業)
第2話「中学受験という競争」その2(週末テスト)
第2話「中学受験という競争」その3(いじめる人間、いじめられる人間、どちらでもない人間)

第3話「新しい順位」その1(井の中の蛙)
第3話「新しい順位」その2(裏切りの予感)
第3話「新しい順位」その3(秋のクラス替え)

第4話「競争と傲慢」その1(ビリからの再出発)

第3話「新しい順位」その3(秋のクラス替え)

国語は火曜日、算数は木曜日に授業があった。火曜日の授業前に先週のテストの結果と席順が公開された。テストの結果は衝撃的だった。算数は再び一位で、二教科の合計点も一位だった。先週と同じ席について、自分の名前が刻印されたノートを手にすると、安心感が胸いっぱいに広がった。

(やったぜ!また一位だ!)

一位という甘い言葉に浸っていると、内野がやってきて「おめでとう」と言った。

「また算数が一位だね。すごいや」

「ありがとう。また無料でノートをゲットできたぜ!」

二人で廊下の掲示板を見にいった。数人の生徒が集まっている横に着くと、今回のテストの成績上位者の名前がはりだされていた。Sクラスの一位は伊藤だった。伊藤は算数も国語も一位である。

伊藤は先週のテストで後ろにいた生徒である。試験が終わった後に顔を見て、自分とまったくタイプが違うことを知っていた。第一に大人びていた。第二にメガネをかけていた。自分は誰よりも子どもだったし、メガネもかけていない。

国語の解答用紙を思いだした。自分の解答用紙は空欄が目立ったが、彼の解答用紙は黒い文字が目立っていた。Aクラスで一位をとったことはうれしい。しかしSクラスでトップ近い成績をとっていかないと東京中学校に入ることは不可能だ。

冷や汗が出た。しかし自信もついていた。一位をとるということがどういうことか、井の中の蛙ながらもわかったからだ。

(絶対に日本一の成績をとってやる。この伊藤というやつも絶対に抜いてやる)

…翌週の火曜日、三回目の試験の結果が掲示板にはりだされた。

(どうして俺の名前がない!)

二週連続でAクラスの一位だったから、今週もあると思っていたが、自分の名前がない。手足が震えた。先週の算数も手応えはあり、最低でも九割はとれていると思った。国語はいつものようにボロボロだったが、算数と差し引いても二回目のテストと大きく変わらないはず。

(なんで、どうなっているんだ!)

廊下を小走りに駆けて、Aクラスの教室に入った。黒板横の席順を確認した。

一列目に自分の名前がなかった。

心臓が止まりそうだった。一列目にない。おそるおそる視線をずらした。二列目にもない。悪夢がよみがえった。そういえば自分はビリだった。入塾テストの結果はビリで、自分はもともとビリだったのだ。

三列目にも四列目にもなく、最後の六列目にもなかった。

(あれ…)

そもそもこの教室に自分の名前がなかった。混乱した。まさかと思った。

(自分はこの塾から消されたのか?家が月謝を払わなかったとか…)

慌てて教室を出て、フロアを降りて受付に行った。受付の事務員に声をかけた。

「あの、僕の名前が教室にないんですが」

すると事務員の後ろにいた男性職員がなにかに気づいたように席を立った。

「今日はクラス替えの日なんだ。廊下の掲示板にクラスの名簿があるから、ちょっと見てみて」

クラス替えという言葉を聞いて、すぐにピンときた。三年生は二つのクラスしかない。Aクラスに自分の名前がないということは、自分はひょっとしたら一つ上のクラス…。

すぐに階段を上り、教室のあるフロアに戻った。成績上位者の名前がのっている紙の横に、細かい字がびっしりとつまった紙がとめられていた。それは全クラスの名簿である。Aクラスにいる者、Sクラスにいる者のすべての氏名がそこにあった。この名簿は五十音順だった。

彼はSクラスの名簿を見た。そこに自分の名前があった。

(嘘だろ…ビリだった俺が一番上のクラスなんて)

思わず泣きそうになった。そもそも自分は入塾試験で不合格だった。たまたま運良く拾われたが、最初はビリから始まった。しかもその時から国語の成績はたいして伸びていない。そんな人間が一番上のクラスに入れるなんて、どうかしていると思った。

…SクラスはAクラスと違うフロアにあった。Sクラスの教室に入ると、Aクラスと同じように生徒たちがぺちゃくちゃと談話していた。初めて入る教室だから緊張した。黒板の横に席順がはりだされていた。

五列目の右から二番目に自分の名前があった。かろうじてビリではなかった。いや、ビリでもいいと思った。ここは一番上のクラスだから、最初はビリでもよかった。

五列目の席に座ってしばらくすると、席順を見て一列目の左端に座る人間の姿が見えた。

(あれが伊藤か…)

ひょうひょうとして、すでに大人の風貌である。メガネをかけていて、いかにも頭がよさそうだ。このクラスで競争するということは、彼と競争するということに他ならなかった。

続き:第4話「競争と傲慢」その1(ビリからの再出発)

これまでのストーリー

「ペンは剣よりも強し」全話目次(第1話〜)

第3話「新しい順位」その1(井の中の蛙)
第3話「新しい順位」その2(裏切りの予感)
第3話「新しい順位」その3(秋のクラス替え)

第4話「競争と傲慢」その1(ビリからの再出発)

あとがき

主人公はついに一番上のクラスに入りました。しかし最初はやはりビリに近いところから始まります。この後、彼はこれ以上成績を伸ばすことができず、競争に勝つことの難しさとむなしさを痛感することになります。

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