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連載 学校と先生が教えない資本主義と独占

ソフトバンク・ビジョン・ファンドと末期的な経済:人工知能とギグ・エコノミーは手段を目的にすりかえてイデオロギーをふりかざす

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ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先を調べると、経済の末期的なイデオロギーがわかる。今は WeWork の新規公開が予定されているため、ファンドの投資額は ? で伏せることにした。投資先は公式サイトだけでなく、下のメディアも参考にした。

会社 投資額
Uber ?
Slack ?
WeWork ?
Flipkart ?
滴滴出行 ?
Coupang ?

SoftBank's running list of deals shows the Japanese company is one of the biggest, craziest investors in tech right now

フードデリバリのDoorDash、ソフトバンクのリードで5億3,500万米ドルを調達——料理配達以外にも取扱を拡大、全米1,600都市で展開を目指す

孫正義、WeWorkへの即決40億ドル出資の舞台裏

ソフトバンク、配車サービス大手Didi(滴滴出行)に16億米ドルを出資へ

韓国eコマースCoupang、ソフトバンクのビジョンファンドから20億ドル調達

ここからは個人の主観が入る。ソフトバンクやフードデリバリーサービスが好きな人はもう読まないでほしい。たぶん Google 検索に戻ったほうがいいと思う…。

人工知能はビジョンにならない

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先で光を放っている会社は NVIDIA くらいで、しかもソフトバンクはとっくに大部分(すべて?)を売ってしまった。ソフトバンクは AI 群戦略というユニークな戦略を掲げているが、機械学習の本命はさっさと切ってしまった。

AIを制するものが世界を制す「AI群戦略」 ソフトバンクグループ決算説明会レポート

機械学習は YouTube や Amazon のレコメンド、画像処理、流通の最適化といった分野で利用されるが、それでおしまい。私たちの精神的な生活は機械学習の発達やデータの蓄積から恩恵をほとんど受けない。人工知能のおかげでサービスがぜいたくになっていると感じたら、たぶん不健康な生活を送っている。

エジソンが電球を売ったらどうなったか? 当時の人は火事のリスクを気にすることなく、夜も本を読めるようになった。フォードの自動車が普及したから、日曜日に遠出してピクニックすることができた。

今を見るとどうか? モニターの外でタケコプターのような道具が発明されたか? ロケットが毎日発射される時代になっているか? 砂漠は緑化しているか? 農業の生産力が劇的に進歩しているか? モニターの外は停滞している。機械学習が発達しても景色はほとんど変わらない。未来を変えるのは機械学習という手段でなく、夢という目的である。

そもそも機械学習という言葉をなぜ使わないか?

機械学習という言葉でなく、人工知能という言葉を使っている会社はおそらく大衆を軽蔑している。技術者は真の人工知能が存在しないことを知っている。会社が人工知能という言葉を使う理由は、技術者がいないか、大衆を説得することに命をかけているか、またはその両方。

脳のない粘菌も知能のある動きをする。知能とは、ニューロンのつながりを超えた、生物学的な動きに依存している。私たちの知能は途方もない数の細胞とその関係、認知、物理的な不確実性の上にある。

何十億年前、無限に近い数の化学物質が何億年もかけて結合と分解をくりかえし、ひょっとしたら紫外線という助けを受けて、最も原始的な生物がたまたま生まれた。それから化学的・生物学的な反応の果てしない連続で、現代人の知能がある。

私たちの経済活動は、実は生物学的な本能に根ざしている。食べる、遊ぶ、寝るという作業のすべてに生物学的な意味がある。そこには何十億年の営みがある。コンピューターにはない。できることは機械学習だけで、機械学習は目的でなく手段である。

機械学習でなく人工知能という言葉を使うのは、それを目的にしたい人がたくさんいるからだ。人工知能は新しいブームで、ブームは投資を促す。本当は手段でしかないのに、ブームだから目的になる。人工知能をビジョンにしたとたんに、会社からビジョンはなくなる。ビジョンとは目的であり、手段でないからだ。

ギグ・エコノミーの本質は手段としての問屋

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは多くのギグ・エコノミーに投資している。

そして私はギグ・エコノミーの多くに嫌悪感をもっている。これらは既存サービスの置きかえにすぎないが、イノベーションという言葉でアイデンティティーと時価総額を守っている。イデオロギーの主張がうまく、一部の創業者はかなり傲慢である。

ギグ・エコノミーそのものは素敵なサービスかも。既存のタクシーやホテル、フードデリバリーやシェアオフィスに不満をもっている人がいて、ギグ・エコノミーがその不満を解消するとしたら、世界はまた一歩前進したといえる。

しかしそれでも、多くのギグ・エコノミーはサービスの代替にすぎない。私は普通のホテルに泊まりたいし、普通のタクシーを利用したってかまわない。そこにピア・ツー・ピアの関係があったとしても、テクノロジーが世界をすばらしい場所にしたとあまり思わない。

ギグ・エコノミーはただの問屋で、根本的に高い付加価値を生んでいない。鉄道が生まれ、電気が通り、自動車が走り、家電が普及し、コンピューターができて、インターネットの接続が当然になったこれまでの技術革新と異なり、これらはサービス業の流通でしかない。

そしてサービス業の流通は目的にならない。サービス業は目的になる。しかしその流通は目的にならない。それは手段の枠を超えない。サービス業の流通を目的にするのは、それが金を得る手段になるとわかっているからだ。

目的のないギグ・エコノミーは経済成長に貢献しない

ある会社が新規公開をひかえているため、このセクションは削除しました。

ギグ・エコノミーはプラスとマイナスの影響があります。サービスの流通は、コンビニのフランチャイズと同じように「真の客」を巧妙に隠していますが、それは自分たちのビジネスに目的がなく、ビジネスそのものにプラスの経済的な効果がないことを知っているからです。

…といったことを述べましたが、詳細は削除しました。

犬の散歩代行というディストピア

ソフトバンクの出資先に犬の散歩代行サービスがある。私は熱心な環境保護活動家でも動物愛護主義者でもないが、このサービスを知ったときは絶望的になった。

犬の散歩は何時間もかからない。犬の散歩代行と、保育園に子どもを預けることは根本的に違う。犬と触れあう時間を作りたいから犬を飼うのに、なぜそれをわざわざ代行させる? このサービスは、人間が犬を「生物」でなく本当の「ペット」として扱っているあらわれだ。

私はいつも、それ自体よりもそれが統計的な意味をもつところに注目している。このサービスがただの代行でなく、飼い主とドッグウォーカーのマッチングプラットフォームであることに意味がある。プラットフォームという手段をペットと触れあう時間に適用し、経済の目的につなげた。

もっと恐ろしいのは、この代行サービスを「ペットビジネスを変える新しいプラットフォームが登場!道路情報もついでにゲットできるかも!?」と受けとめるメディアだ。寒気がする。

学生とソフトバンクへ

こうしたコラムをこの教育メディアに掲載するのは、目的と手段の境界を考えることが人間教育のかなめだと思っているからです。ソフトバンク・ビジョン・ファンドは一定の影響力があります。そうした影響を考えることは、古文の活用形を覚えるよりもたぶん役に立つでしょう。

なにかを学んでいる人へ。

どうか手段と目的をごちゃごちゃに考えないでください。経済は金を得る道具で、手段と目的の境界はあいまいです。しかし手段を目的にするイデオロギーが支配的になったら、人間はただの道具になってしまいます。ギグ・エコノミーに怒っている人たちのデモを見てください。

就職と転職、結婚、美容室やレストラン、フランチャイズ、小売、ホテル・旅館・不動産・中古車といったサービスで、手段を目的にした経済ができあがっています。これを読んでいる人には、就職活動中の大学生がいるでしょう。結婚をひかえた人も、美容室やラーメン屋を運営している人もいるでしょう。フランチャイズのオーナーやホテルの従業員もいるかも。

エントリーシートを書いて無駄な会社説明会に行く文化に疑問をもったことはありませんか? 人の味覚はバラバラなのに、なぜレストランは星で格付けされるのか? どうして「ホテルの予約」の比較をするようになったのでしょう? そもそもなぜ結婚式を派手にあげることが当たり前になったか?

エントリーシート、美容室やレストランの格付け、マーケットプレイス、予約比較…こうしたサービスの本質を考えてください。手段が目的になる過程を分析して、資本主義の建前を理解することは、将来必ず役に立ちます。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドへ。

手段を目的にしないでください。巧妙な建前をイデオロギーにして、人間を道具にする経済を作らないでください。

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