可換環論と代数幾何学の最高の入門書「Atiyah-MacDonald可換代数入門」
「可換代数入門」(Atiyah‐MacDonald著)は共立出版から出ている環と加群の入門書で、「Introduction To Commutative Algebra」の日本語版です。本書は可換環論や代数幾何学を本格的に勉強したい人にぜひおすすめしたい一冊です。
深い青色の表紙カバーが特徴的。ハードカバーでページをめくりやすい。厚さのボリューム感はあまりないので、半年くらいは粘れそうな感じがします。
項目 | 評価 |
---|---|
使いやすさ | ★★★★★ |
詳しさ | ★★★★★ |
おすすめ | ★★★★★ |
レベル | 中級 |
対象 | 大学三年生~ |
環、イデアル、加群の専門書として完成度が高い
本書は環と加群を主に扱っています。体とガロア理論は含まれていません。数学ではハーツホーンなどの代数幾何学の入門書として位置づけられています。
ハーツホーンは三巻あり、一巻のボリュームは「可換代数入門」(Atiyah‐MacDonald著)と同じくらいある。
説明は基本的にわかりやすく、重要なポイントとそうでないポイントで詳しさに差をつけています。各章に練習問題がたくさんついてあり、解説を読むこと以上にこの問題を解くほうが勉強になるでしょう。初めてこの分野を勉強する方も挫折しないで最後まで読み通せるはず。
結論
他の専門書と比べて厚さは薄く、しかし適度なボリュームがある。学ぶ人間の負担をできるだけ減らそうというスマートさもある。
代数幾何学の基本としての可換環論
可換環は幅が広くきりがありませんが、本書は代数幾何学で必要になるポイントに的を絞っています。例えばspec、ネーター環、離散付値環、正則局所環など。本書の最終章は正則局所環ですが、これは代数幾何学で使われる重要な環です。
一方、可換環そのものを勉強したいという方はやや不満が出てくるかもしれない。本書では物足りないという方は同じ共立出版の「可換環論(松村)」をおすすめします。
使い方
私は大学三年生の「数学輪講」という授業でこの本を勉強しました。「数学輪講」は二人から四人くらいがグループを作り、説明したり質問に答えたりするというコミュニケーション重視の授業です。
毎週各章の定理や命題を証明し、問題をできるだけたくさん解いていました。二ヶ月くらい経って痛感したことは、章末問題を飛ばしていくとだんだん泥沼に入っていくということです。問題はなるべく飛ばさないでください。
もう一つ大切なことは、式や図は頭だけで処理しないで、なんでもかんでも紙に書くということです。高校数学と違い、大学数学(特に抽象的な分野)は頭の中だけで処理するような勉強スタイルになりがち。これは計算を疎かにするという悪い習慣につながってしまいます。数学の基本は計算であり、それは解析学に限りません。
- 問題を飛ばさない
- 紙に書く、残す
本書の面白さは最終章の次元論にあります。ここをきちんと読んで、問題をきちんと解いて、環(特に正則局所環)という概念の面白さと重要性がよく理解できれば、ハーツホーンなどの代数幾何学系の本を読むときの負担が減るでしょう。
可換環
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環と可換環の定義01638
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素イデアルの定義と可換環の次元の話03762
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極大イデアルの定義と性質(可換環)02158
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素イデアルの定義と性質(可換環)02683
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ネーター環の定義と性質04501
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すべての環は極大イデアルをもつ0511
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整域の整閉性は局所化で保存する0751