連載 学校と先生が教えない資本主義と独占

Netflix オリジナルで一番面白い番組は「汚れた真実」:ウェルズ・ファーゴとバリアントからわかる世界の闇

Netflix オリジナルで一番面白い番組は「汚れた真実」かもしれない。1 本 1 時間弱のドキュメンタリーがここまで濃密に仕上がっている作品はあまりない。

「汚れた真実」というタイトルからわかるように、この番組は世界の闇をとりあげている。その闇はドナルド・トランプ、そして娘婿のジャレッド・クシュナーからウェルズ・ファーゴまで。

この記事は番組の概要も内容の一部も紹介しない。制作会社の努力に傷をつけるより、この番組の題材になったウェルズ・ファーゴ、バリアント、ジャレッド・クシュナーという名前を知ってもらうほうがいい。

ウェルズ・ファーゴ

私は Apple などのアメリカ株をいくつか所有しているが、ウェルズ・ファーゴも候補の一つだった。ウェルズ・ファーゴはウォーレン・バフェットがかつて大規模に投資していた銀行で、西部の庶民派なイメージをもっている。この点で J.P.モルガンなどと性格が異なる。

この銀行はクロスセルで有名だったが、株価上昇の裏で架空取引を行っていた。不正な慣行を強いられた従業員の告白は、Netflix オリジナルドキュメンタリーで最もなまなましいものだった。

ウェルズ・ファーゴは「アメリカで最も信頼できる銀行」というイメージが個人的にあったが、そのあいまいな信頼はすべて消えた。

バリアント

バリアントは北米の製薬会社で、エンロンと比較されるほどの不祥事を起こした。バリアントは会社の買収をくりかえして急速に成長したが、その裏で開発予算を削り、薬の価格を上げた。

バリアントの不正は非常に複雑で、非常に大規模だった。「汚れた真実」で最も難しく、最も夢中になって見てしまう回かもしれない。

社会保障や医療が先進国の問題になる中でこうした不正が起きるのは、悪人はいつも社会の弱点を狙うからだ。アックマンという著名投資家がバリアントの不正を見抜けず出資したことは、投資家と会社の間に超えられない溝と闇があることを示唆する。

そのアックマンはコロナウィルスによる株価の乱高下をうまく抜けたことで、投資家としての地位をさらに高めている。

ジャレッド・クシュナー

ジャレッド・クシュナーはドナルド・トランプの娘、イバンカ・トランプの夫である。ドナルド・トランプもたたけばほこりが出る人物だが、実はジャレッド・クシュナーもその点で負けない。

この二人はどちらも不動産を商売にしているが、ジャレッド・クシュナーはドナルド・トランプよりも地味に物件を経営している。Netflix ドキュメンタリーで彼の経営する物件を見てほしい。そして彼が住人に送っているという請求書を見てほしい。

私の感想は「ありえない。人のやることとは思えない」。

この番組は数々の不正を扱ってきたが、ジャレッド・クシュナーは残酷さにおいて群を抜いている。この実態を知ってなお、イバンカ・トランプは彼と結婚したのか、そもそも興味がなかったか、それはわからない。今のアメリカ政府は恐ろしい一族に牛耳られている。

汚れた真実は社会の罠を教えてくれる

後見人制度の悪用や消費者金融の不正など、この番組は悪人のしかける不正をわかりやすく説明する。悪人は罠をしかけて、じっと待ち、罠にかかった者から財産をしぼりとる。

私たちは平和に生きているが、こうした罠にかかるリスクはついてまわる。ドキュメンタリーの社会的意義は私たちの危機管理意識をよびおこすことにある。まずはあなたも、吐き気がするほど恐ろしい経済の闇を見てみよう。みんなが悪を知ることで、経済の闇にメスが入り、悪人は自然淘汰される。