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連載 先読み5G:高速通信とGAFAの未来

2030年の未来予測(産業とメディア編):世界の分断と文化の多様化はローカル・メディアを産業の中心におしあげる

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2030 年以降の世界はどうなっているでしょうか。次の Apple や Microsoft はどんな会社でしょうか。今回は未来の産業について予測しますが、いつものとおり学問的に価値はないので忙しい人は読まないでください。

私は個人的にこんな経済を予測しています。

産業の中心がソフトウェアからメディアに移る

今は「ソフトウェアがすべてを食いつくす」時代ですが、10 年後はおそらくソフトウェアの付加価値が減り、産業の中心がメディアになるでしょう。

消費者の行動はだいたいがウェブ上にあり、インターネットの玄関をおさえている会社が経済の支配者になります。ユーザーに一番近い会社は今のところ Apple です。

世界の時価総額はユーザーとの距離でだいたい決まる。今はウェブ以外の行動が主体で、小売、流通、製造がメディアと同等の影響力をもっていますが、今回のウィルス問題(と 5G 回線)をきっかけにユーザーの消費行動は著しくウェブに依存することになります。

結果、ユーザーに一番近い「メディア」が多くの市場で支配的にふるまい、メディアを起点に産業が形成されていきます。

メディアのマイクロ化

今年以降、世界は分断するでしょう。国の内部でも分断が進み、文化は極端に多様化するでしょう。私はドナルド・トランプ大統領が「不確かな分断世界」の象徴だと確信しています。歴史はオバマ以前とトランプ以降で大きく変わったのです。

国際的なイデオロギーの対立と国の分断によって、ユーザーの行動は多様化します。Facebook のような巨大ソーシャルメディアは力を失い、地域やコミュニティーの文化を深く理解した「ローカル・メディア」が世界中で生まれるでしょう。

政治のマイクロ化 → メディアのマイクロ化

マイクロ・アーキテクチャというソフトウェアの概念はメディアに最適です。メディアはユーザーに近づいてユーザー・フレンドリーになり、ユーザーのアイデンティティーと価値観を認めるローカル・メディアが世界を覆います。これらのメディアをまとめて所有する会社が次世代のリーダーになります。

メディアはインフルエンサーとデータに支えられる

昔ながらの典型的なメディアはニュースですが、今後のメディアはインフルエンサーが主体の人間らしいメディアと、統計データを配信するメディアが主流になります。

例えばこのサイトは教育に関する記事を配信していますが、そうしたメディアは衰退するでしょう。報道、ニュース、評論、社会、政治、教育、科学といったカテゴリーは付加価値の低いメディアとして厳しい競争が待っています。これらはエンターテイメント化される必要があります。

ほとんどのメディアはインフルエンサーが中心のメディアに集約され、エンターテイメントとして機能します。残りは Bloomberg のようなデータ型メディアになるでしょう。つまりメディアは

のどちらかに収斂されます。食品や日用品の製造業はインフルエンサー型メディアに依存する形で成長します。金融、B2B ビジネスはデータ型メディアにぶら下がるでしょう。

メディアと周辺市場の統合

2030 年以降は産業の垂直統合が進みます。消費者の行動を熟知しているローカル・メディアが小売と製造に進出し、今の Apple のような形態をとるでしょう。

Forbes などのメディアはすでにイベント事業に進出し、BuzzFeed は Tasty Shop などでキッチン用品を売っていますが、これは始まりにすぎません。トヨタイムズというトヨタのサイトがオープンしましたが、これは製造業の戦略としてだいぶ先取りしている。

メディアはすべてを食いつくす。これはメディアのマイクロ化にともなう必然的な成長です。マイクロ・メディアは周辺のメディアを開拓できないため、メディア以外の市場を食べていくことで自立します。

プログラマー、マーケター、インフルエンサーの三者が労働の花形になる

日本を除いて、プログラマーは花形の労働になっていますが、この傾向は今後も続くでしょう。しかし政治と文化の分断に対応するには、消費者の行動を深く理解したマーケティングの専門家が不可欠です。

メディアが低付加価値のサービス業から高付加価値のプラットフォームになるには、プログラマーとマーケターの両方が必要です。産業の付加価値は機能からマーケティングに本格的に移行します。

エンターテイメントの担い手はインフルエンサーで、インフルエンサーとメディアは二人三脚で成長するでしょう。

金融はテクノロジー企業に支配される

メディアというよりはテクノロジー企業が銀行、投資、保険、不動産の市場を破壊するでしょう。Amazon などの小売は金融と相性がいい。

メディアが金融に進出するのはマグロウヒルの歴史を見るとわかる。20 世紀初頭にできたこの出版社は株価指数を発表し、21 世紀になって社名は S&P グローバルになった。日本経済新聞も日経平均を公表していますが、メディアはいつも金融に関心をもっています。

株価指数に似た概念は今後さまざまな分野で発明されるでしょう。個人の信用リスクにもとづく指数、奨学金の返済能力にもとづく指数、物件の空室率にもとづく都市の競争力指数…こうした細かい指数をメディアは生み、ユーザーはそれにもとづいて行動するようになります。

金融メディアの手本は Bloomberg です。大量のデータを配信し、巨大なネットワークを所有し、独自の指数を開発しているこのメディアは、実は Facebook 以上に「敵にしたらいけない相手」です。

あとがき

産業は政治とインフラに影響されます。グローバルの政治課題は米中の新しい冷戦、環境保護、食料不足、市民のナショナリズム、そして深刻な少子高齢化です。政治は産業を変えますが、消費者の行動をプラスに変える力はもっていません。消費税増税による経済縮小からわかるように、政治はだいたいにおいて消費者をネガティブに行動させます。

このネガティブな傾向を逆手にとって産業を変えるものは、消費者に一番近いメディアです。ユーザーの行動に合わせて専門領域を確立したメディアは、徹底したユーザー・フレンドリーを掲げてグローバル・メディアに対抗するでしょう。

トランプは「グローバルからローカル」の象徴で、産業とメディアもまたグローバルからローカルに変形します。日用品と化粧品は特にローカライズが重要で、製造とメディアの垂直統合が著しく進むでしょう。

Facebook などのグローバル・メディアと新しい形態のローカル・メディアを比べてみよう。

項目 グローバル ローカル
Facebook Tasty
成長型 水平 垂直
言語 多言語 特定言語
付加価値
独占力

Facebook などのグローバル・メディアはローカル・メディアと競争しますが、この競争のカギは既存プラットフォームの外交にあります。プラットフォームとして機能するメディアの急所はまさにこの巨大な規模です。

プラットフォームは自身より付加価値の低い小売、流通、製造に進出するでしょうか? 垂直統合とコングロマリット化を回避するプラットフォームはおそらく衰退するでしょう。

小売でありながら流通もプラットフォームも所有している Amazon は次の時代も成長する余地があります。「自分は付加価値の低い業態に手を出さない」という卸売発想の中規模プラットフォーム・メディアは、ローカライズの道をたどる消費者のニーズに応えられない。

メディアはすべてを食いつくす。

初出 March 22, 2020

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