反実仮想とためらいの意志の助動詞「まし」の活用と用法
「まし」は他の助動詞と違い、反実仮想とためらいの意志という構文がある。意味だけを覚えるのでなく、用法(構文)を理解しないといけない。
「まし」は反実仮想、ためらいの意志、推量の三つの意味がある。
・反実仮想 … もし~だったら、~だっただろう ・ためらいの意志 … ~しようかな ・推量 … ~だろう
反実仮想は事実と反対のことを仮定すること。普通の「もし~」は、どのような事実であろうと事実と仮定の間に因果関係はないが、反実仮想の「もし~」は事実と仮定を対立させなければいけない。
普通の「もし」 雨が降っていたら、傘を持っていかないとなあ。 ↓ 今雨が降っているかどうか関係ない。
反実仮想の「もし」 あの時雨が降っていなかったら、遠足に行けたのになあ ↓ 事実は「雨が降っていた」。「雨が降っていない」という仮定は事実と異なる。
反実仮想の構文
Aせば、Bまし … もしAだったら、Bだっただろう
ただし「Aせば」の「せ」は「ませ」「ましか」になる場合もある。つまり
- Aせば、Bまし
- Aませば、Bまし
- Aましかば、Bまし
の三つの構文がある。すべて「もしAだったら、Bだっただろう」の意味である。
例文
- 勉強せば、点取れまし(もし勉強すれば、点が取れただろう)
- 花咲かましかば、いとをかしからまし(花が咲いていれば、とても趣深かっただろうに)
ためらいの意志の構文
疑問語+まし … ~しようかな
疑問語とは「なに」「いかに」といった言葉。
例文
- いかに書かまし(どうやって書こうかな)
- なにを書かまし(なにを書こうかな)
推量
「む」などと同じ。「~だろう」と訳す。
「まし」の接続と活用
活用 | まし |
---|---|
接続 | 未然形 |
未然形 | ませ ましか |
連用形 | ◯ |
終止形 | まし |
連体形 | まし |
已然形 | ましか |
命令形 | ◯ |
「まし」は未然形に接続する。「まし」の未然形は「ませ」と「ましか」の両方がある。
古文(古典)の文法
-
現在推量の助動詞「らむ」と過去推量の助動詞「けむ」の用法と活用018130
-
高校古文まとめ(単語、品詞と文法)02113
-
古文の絶対敬語(奏す、啓す)013267
-
「瀬をはやみ」と「苫をあらみ」の文法|古典文法04789
-
「見ゆ」の意味と例文|古文重要単語02741
-
古文の助動詞「めり」「らし」の意味と活用01664
-
反実仮想とためらいの意志の助動詞「まし」の活用と用法022884
-
助動詞「べし」「まじ」の用法と活用012768
-
打消の助動詞「ず」の活用と例文017873
-
使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」の意味と活用032513
-
完了・存続の助動詞「たり」「り」の意味と接続と活用021570
-
古文 助動詞の接続まとめ03016
-
過去の助動詞「き」「けり」の意味と活用と例文015742
-
古典文法 形容動詞の活用(ナリ活用とタリ活用)06678
-
ぞ・なむ・や・か・こそ(係助詞)の係り結びの法則019195
-
古典文法 動詞の活用まとめ(正格活用と変格活用)028738
-
古典文法の品詞の分類043690