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日本の不動産市場と中学受験のサピックス:「不動産サピックス仮説」からわかる神奈川県と埼玉県の違い

「不動産サピックス仮説」という言葉は私がたった今つくった言葉で、サピックスの校舎がある不動産は基本的に買いという考え方です。

私は日能研出身ですが、今はサピックスが中学受験で有名な塾になっています。開成の合格者数はなんと約270人(今年度)で、ほぼ全員がサピックス出身。このサピックスがある地域は見事なくらい、いろいろなことを語っています。

日本で家(土地)を買うときの注意点と決め方を個人的にまとめた:首都圏の北東エリア(埼玉県)は避けるで埼玉県の不動産は買ってはいけないと言いました。埼玉県の不動産は全体的に魅力がなく、まだ千葉県のほうがいいという話です。今サピックスの校舎をチェックして、ますます「ああ、やっぱりサピックスなんだよな」と確信できました。

サピックスのウェブサイトから引用すると、今年度の校舎はこんな感じになっているみたい。

神奈川県の校舎

横浜校
日吉校
武蔵小杉校
たまプラーザ校
青葉台校
センター南校(都筑区)
宮前平校
若葉台校
上大岡校
東戸塚校
大船校
茅ヶ崎校

ずいぶん神奈川県は多い。じゃあ私がじゃっかん高級化していると言った千葉県はどうなのか?

千葉県

松戸校
柏校
西船校
千葉校
海浜幕張校
新浦安校

そこそこある。神奈川県(905万人)と千葉県(627万人)の差にしては、サピックスの校舎はけっこう差があるけど。でもそれは横浜市という大都市があるせいかもしれない。

そこで出てくるのが埼玉県(733万人)。

南浦和校
大宮校
所沢校
新越谷校

埼玉県は千葉県よりだいたい100万人も多いのに、サピックスの校舎はほとんどない。

「埼玉県の悪口を言うな!お前、何様だ!」

と言いたい人もいると思うけど、私はこの埼玉県にいました。

なので、少しは話をしてもいいはずです。ここからはこれから首都圏に引越してくる人に向けて話をします。すでにずっと東京に長くいる人はよくわかっているはずなので、この記事はもう読まなくていいかも。

サピックスの差と犯罪率の差

全国の公立小学校がおこなうテストの平均点で埼玉県と神奈川県はほとんど差がない。このての統計ではいつも秋田県と北陸地方が上位にくるけど、それは不動産的にはほとんど意味がない。

住宅不動産市場は住民と自治体の質に強く影響されると先日言いました。この住民の質というのはすごく嫌な言い方ですよね。でもサピックスでがんばっている子どもとその家族はきわめて教育に熱心で、おそらく「きちんとしている」ことは想像できるでしょう。

そして、中学校なんていかなくていいや、という感じの子どもは「たぶんきちんとしてない」と想像するでしょう。このウェブサイトを読んでいる人でいまのくだりにムカッとする人はほとんどいないと思いますが、もしイラッとしたらすみません。

でも、サピックスの多い神奈川県とサピックスの少ない埼玉県の犯罪率の差を見れば、イラッとした人も納得するはずです。

犯罪率2%を超えている市区町村

神奈川県…3つ
埼玉県…6つ

埼玉県にある大きな市区町村はだいたいが1.8%以上(川口市は約1.9%)なのに、神奈川県は1.8%を超えている市区町村が3つ、しかもうち2つが横浜市中区と西区というでかい商業地域。

埼玉県は浦和をのぞいて横浜市のような巨大な市区町村がないのに、全体的に2%近くの犯罪率となっている。ベッドタウンだけでみると、埼玉県は神奈川県のほぼ2倍の犯罪率です。

「神奈川県の県警が改ざんしているか、統計に入れてない犯罪が多いはずだ!」

と言いたい人はさすがにいないと思いますが、過去に起きた重大犯罪を考慮しても、神奈川県はきわめて犯罪率が低い都道府県です。それどころか大都市がある都道府県で一番安全な都道府県は神奈川県なのです。

サピックスが多いこと、犯罪率が低いこと、資産と所得が多いことはつながっています。首都圏にくる人は埼玉県より神奈川県の不動産に目を向けるべきです。サピックスが多いから地域がよくなるのか、地域がいいからサピックスができるのか、というのはよくわからない。

まあとにかく、だんだん「埼玉県の不動産を買ってはいけない理由」がわかってきたと思います。

サピックスが不動産市場に影響する本当の理由

どうしてサピックスが非常に重要なのか。それは中学受験の独特なシステムにあります。

まず開成中学校に入りたい人はほぼ確実にサピックスに入ります。サピックスに入ることがスタート。ここで中学受験の親になったつもりで考えてください。子どもに限界まで勉強させないと開成には受からない。それなのに行き来の交通時間が長かったらどうでしょう?

これを読んでいるサピックスの保護者は当然わかっていますよね。交通時間を1分でも減らすことがなによりも重要だと。そうすると当然、サピックスの近く、つまり若葉台とか青葉台とか南浦和の近くに住むことになります。

サピックスが遠かったら中学受験に合格しない!…なんて考える親は教育熱心であり、ある程度の富裕層です。こういう親は子どものために不動産を買う傾向があります。実際、そういう人をたくさん知っています。たくさんというか、サピックスの上位にいる人の半分はそうなんじゃないか?

中学受験は本当過酷で、子どもの戦争はそのまま親の戦争です。親の所得、気合いとタフさが中学受験に合否につながる。私の場合はまるで違うけど。その奇妙なエネルギーが不動産市場を動かしている。

ここからはいつものアホフェルミ推定をやってみます。私はフェルミ推定というのが非常に嫌いですが、これをひょっとしたら読んでいるかもしれない教育ママのためにフェルミ推定の例を見せます。

まず男子と女子の御三家の受験者数を合計する。データはすべて各学校のウェブサイトから引用した。

開成 1051人
麻布 881人
武蔵 584人
桜蔭 561人
女子学院 723人
雙葉 357人

筑駒や灘は開成中学校の受験者とかぶるのでカウントしない。上の合計はざっくり4,000人。つまり鬼のような形相で血と汗と涙と何百万円の大金をつぎこむ世帯が少なくとも4,000世帯ある。

少ないと思いますか?

これは御三家だけの話で、実際は駒場東邦とかいろんな2月1日校があり、ほんの一握りだけが御三家を実際に受ける。サピックスも日能研もなんでも、5個も6個もクラスがあって、その一番上にいる人間だけが実際に御三家を受ける。

ということは、20,000世帯が中学受験に必死こくわけですね。下のほうはやる気があまりないにしても、およそ15,000世帯は教育パパ・ママと考えていいでしょう。この15,000世帯こそが不動産市場を大きく動かします。

ここまで受験生の世帯を考えてきました。でもよく考えてください。中学受験は2年生くらいからスタートです。実際は60,000世帯が中学受験の競争に突入しています。この15,000世帯というのは毎年投入されるファミリー層なのです。

☆毎年15,000世帯が中学受験戦争に入ってくる

首都圏は人間の移動が活発です。中学受験の親たちは独身時代から結婚を歴て、子どもをつくります。ほとんどの人はどこかで必ず移動するはずです。おそらく子育てが引越しの決定打になります。そうすると、中学受験を考えた時点で、サピックスがあるたまプラーザあたりに引越そうと夫婦のどちらかが言いだすわけですね。

この「サピックスのあるどこどこに引っ越そう」と考える世帯は、15,000世帯のうち3分の2以上はあるでしょう。ここでは10,000世帯とします。残りの5,000世帯は最初からたまプラーザにいて引っ越さない世帯です。親が最初からたまプラーザにいて、自分もそこに住んでいるとか。若くしてたまたまたまプラーザにローンで家を買ったとか。

毎年10,000世帯が中学受験をきっかけに東京の不動産を購入すると考えていいでしょう。すごい数値ですよ、これは。

サピックスがある地域に毎年10,000世帯の夫婦がやってきたら、それは不動産価格は上がりますよね。しかも厄介なことに金に糸目をつけないタイプが主流派なので、無理してでも高値で買っていく。

☆毎年10,000世帯が無理して高い不動産を買い、いいところに住もうとする

…こういうのをフェルミ推定といいます。ざっくりした推定ですが、大まかな傾向や背景を知るときは役立ちます。実際、1万世帯くらいの家族が中学受験のためにいいところに住むとは思いますよ。そういう姿がなんとなく想像できるし、そのくらいの数はいるでしょう。今は子どもが100万人を少し下回るくらいの数で、その3割が首都圏に集まっているので、全世帯の3%が恐ろしい教育ママということに。でもこれは妥当な数字ですね。

おわり

サピックスのないところには行きたくない、と考える高所得層の夫婦が埼玉県ではなく神奈川県にいく。これが神奈川県の不動産がいい理由です。

前も書いたように、私は東京都、神奈川県、沖縄県の3つだけが最後まで生きのこると確信しています。

ちなみに私は「サピックス若葉台のある稲城市はこれから上がるかも」と思って、周囲に「稲城市は東京都の最後のフロンティアかも」と言っていますが、今公示価格を見たら、今年は(東京都の大きい市区町村では)稲城市だけがプラス成長みたいですね。これだけでサピックス理論が妥当とはもちろん言えない。ただ、私は稲城市は「買い」だと思っています。

だからってあてにしないでください。自分がいいと思う地域に引っ越せば、それでいいんです。家を買うというのは思っている以上に深くて、面白くて、難しい。サピックス理論はあくまでもツールの一つにすぎない。