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「ご確認下さい」は間違っていない~「下さい」と「ください」、「頂く」と「いただく」の議論の結論

メールなどで「ここは漢字にするべきか、ひらがなにするべき」と迷うときがあります。「ご自愛ください」と「お体にご自愛ください」で言葉の使い方に正しいもへったくれもないと書きましたが、漢字とひらがなの使いわけも同様です。

だからこそ次の方針をおすすめします。

  • 重要なメール(文書)では、上司または取引先に合わせる
  • そうでない場面では、自分のポリシーを統一する

重要なメールまたは文書では、相手の言葉遣いを尊重し、それに合わせます。例えば、上司が「致します」「頂く」という漢字を貫いているなら、上司に送る重要なメールもその方針にしたがうべきです。

しかし、ちょっとしたメールや簡素なやりとりでは自分のポリシーを表現してもいいのではないでしょうか。この場合、使い方には統一感を持たせる必要があります。

参考:そもそも尊敬語と謙譲語ってどう違うの?敬語の使い分けをわかりやすく解説します

本動詞と補助動詞

NAVERまとめの「ご確認"下さい"は間違い?!漢字とひらがなの使い分け、知ってた?」という記事では次のように書かれています。

漢字と平仮名を分ける基準は,“動詞は漢字で,補助動詞は平仮名で書かねばならない”という原則です。
出典 公用文の書き方 5 “動詞は漢字で,補助動詞は平仮名で書く”と覚えるべし - 菊池捷男 [マイベストプロ岡山]
「~いたします」「~してください」「~していただく」のように、補助動詞にあたる言葉は、平仮名で書くのが標準的(公用文という意味で)な書き方です。
出典 「致します」はひらがなで表示ですか? - 国語 | 教えて!goo
引用元「ご確認"下さい"は間違い?!漢字とひらがなの使い分け、知ってた?」-NAVERまとめ

この記事を書くきっかけとなった記事です。公用文において本動詞を漢字、補助動詞をひらがなとすることが原則となっているため、ビジネスメールなどでもそのようにしたほうがいい、といった内容でした。

記事はとてもすばらしい内容ですが、ここではさらに漢字とひらがなの使いわけについて補足します。結論からいうと、公用文において補助動詞をひらがなにするといった原則はほとんどありません。

この70年間で社会、経済、そして政界の情勢は大きく変化し、現在、少子高齢化等、新たな難しい諸課題に直面しております。先人に倣い、今を生きる私たちも一つ一つの課題に真正面から立ち向かい、未来への責任を果たさなければなりません。誰もが生きがいをもってその能力を存分に発揮できる社会、国民が安心して暮らせる豊かで平和な社会をつくり上げていくため、政府としても全力を尽くしてまいりたいと考えております。
外務省-参議院70周年記念祝賀会(2017年5月19日発表)

この文章から補助動詞のある動詞を抜きだします。

  • 立ち向かい
  • つくり上げて

原則が守られていないことがわかります。官庁の文書は最も公的な文書ですが、多くの公的文書において補助動詞をひらがなにするという原則は成り立っていません。官公庁の公式文書をざっと読めば、そのことはすぐにわかるでしょう。官公庁の公式文書では、代わりに次のような傾向があります。

  • 「もうしあげる」は「申し上げる」と書く
  • 補助動詞の「あげる」は「上げる」と書く
  • 「うけとる」は「受け取る」と書く
  • 「だす」は「出す」と書く
  • 抽象的な「いく」はひらがなにする
  • 「まいる(まいります)」はひらがなにする

これらもあくまで傾向であって原則というレベルではありません。

つまるところ、本動詞と補助動詞によって漢字とひらがなを使いわけているわけではないのです。したがって、次の例はすべて公的な使い方という点においても妥当です。

・ご確認いただく
・ご確認頂く

・お振込ください
・お振込下さい

結論:上司または取引先に合わせる

最初のくりかえしになりますが、結局は目上の人の言いまわしに合わせるだけですべて解決します。

おしまい。

追記:「下さい」と「頂く」はひらがなで書く

上司に合わせよう、おしまい、ではこの記事の存在価値がほとんどないので、ここからは個人的な屁理屈をざっとこねて

若者は「下さい」と「頂く」はひらがなで書こう

と主張したいと思います。

私は、漢字は堅苦しいもの、したがって年配の人が使うもの、と考えています。一方の若者は、高校生がひらがなとカタカナの新語を次から次へと作ることから考えても、漢字ではなくひらがなとカタカナを好むと考えていいでしょう。

このような認識から、若者が本来ひらがなで書いてもまったく問題ないところをあえて漢字で書いているさまは、しゃちほこばって頭でっかちな印象を与えかねないわけです。

例えば次の文をどう感じますか?

メールをご確認頂いた後、当社指定の口座にお振込下さいますよう宜しくお願い申し上げます

漢字の冗長さが際立っています。これは

メールをご確認後、当社指定の口座にお振込くださいますよう、お願いいたします

のようにひらがな化すると、少しまともに見えます。

まとめ:

  1. 上司、慣例、取引先に合わせる
  2. 簡素なやりとりでは自分のポリシーを出す
  3. 本動詞と補助動詞うんぬんの原則はほとんど存在しない
  4. 若者は、ひらがなで問題ないところを無理して漢字にする必要はない

参考:そもそも尊敬語と謙譲語ってどう違うの?敬語の使い分けをわかりやすく解説します

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