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かささぎの渡せる橋におく霜の白きをみれば夜ぞふけにける|中納言家持

かささぎの
渡せる橋に
おく霜の
白きをみれば
夜ぞふけにける

中納言家持『新古今和歌集』冬(六二〇)『小倉百人一首』六

現代語訳

かささぎが
織女を渡らせるためにつくったという橋、そして宮中の階に
おりている霜が
白いようすを見ると
夜がふけたのだなあと思う

文法

この歌は小倉百人一首で最も難解な歌の一つかもしれません。ポイントは「かささぎ」と中国の七夕伝説。

かささぎはカラス科の鳥で、漢字で鵲と書きます。中国の白氏六帖(当該文はさらに『淮南子』を引用している)では、鵲は天の川にかかるように翼を広げて、織女(織姫)を牽牛(彦星)のもとに渡すと記されています。

白居易撰者の『白氏六帖』の巻九「星橋」に

烏鵲填河成橋而渡織女
(烏鵲河を填めて橋を成し織女を渡らしむ)

とあります。

大伴家持の「かささぎの」に戻ると、この歌の「渡せる橋」とは鵲が織女を渡すためにつくった橋であり、同時に宮中の階(はし)でもあると考えられます。

注 階段の階は古文で「はし」と読む

作者

大伴家持(七一八?~七八五)

三十六歌仙の一人で、万葉集4500首のうち473首は大伴家持の歌であるため、万葉集は大伴家持によって編纂されたという説もあります。

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