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アメリカはおそらくリセッション(景気後退)に入った:パウエルはたぶん第二のポール・ボルカーになる

アメリカはおそらく景気後退の局面に入った…と考える人が世界的に増えてきました。原油とガスの値上がり、利上げにともなう不動産ローンの金利上昇、半導体の供給不足、食料価格の上昇、クレジット債務といった問題はソーシャルメディアで毎日議論され、パウエル議長が

The American economy is very strong and well positioned to handle tighter monetary policy.
Semiannual Monetary Policy Report to the Congress

(アメリカ経済は金融の引きしめに耐えるくらいは強い)

と言うたびに批判が起きています。問題に中心は物価の高騰で、市民のほとんどはそれに耐えるほどの金融資産をもっていない。アメリカ経済は強い、という発言は 99% の市民の実情をわかっていない証拠だ、といった論調が主流になってきました。そこでまずはアメリカのインフレーション率 Inflation Rate を見ます。

TradingView より。この記事はすべて TradingView のデータを参考にしている。

ピークは Mar 1980 の 14.8 で、レーガン政権とまさに桁違い。1979 の石油危機が最大の原因です。レーガンのときアメリカはだいたい 3-4% で推移しています。

インフレーションをおさえようと Paul Volcker ポール・ボルカーは FF を上げましたが、経済は混乱して不況になります。ただし、S&P500 はそこまで下がっていない。

インフレーション率の推移はきわめて重要です。上のグラフをもとに、今の状況はジミー・カーターとポール・ボルカーの時代に似ていると考える人も増えてきました。実際にどうなのかこの記事で少し確認します。

ジミー・カーター
20 January 1977 - 20 January 1981

大統領

ジミー・カーターもバイデンも民主党です。バイデン大統領は Bidenflation と揶揄されるほど批判されているため、中間選挙で勝つかわかりません。アメリカの大統領は歴史的に経済が破壊されると交代しやすくなります。

もしバイデン大統領が中間選挙で負ければ、第二のジミー・カーターになる。

原油と国際情勢は似ている

この時代のアメリカは、石油危機による物価の高騰と日本企業の世界進出によって経済が破壊されていました。40 年経った今もアメリカは石油・ガスの高騰、そして中国企業の進出に苦しんでいます。

ロシアがウクライナに侵略する前から、アメリカのドルは中国の発展(元高)によって準備通貨としての地位が揺らいでいました。

1980 → 2022
原油高 → 原油高
日本 → 中国

当時と今の国際情勢はとても似ています。

金と銀は似ていない

カーター政権は株式投資の歴史で最も有名かもしれない。それは株でなく金が優勢だったから。

これをコモディティースーパーサイクルといいます。極端な物価上昇によってドルの価値が大きく減ったことで、投資家はコモディティーをいっせいに買ったのです。

カーターが就任してから、金は 7 倍、銀は 10 倍ほど上昇。ピークはどちらも 1980 年のはじめで、その数ヵ月には半分以下になっている。

ところが 2022 年の上半期、金や銀は下落を続けています。ここがパウエルとボルカーの違うところです。今やほとんどあらゆる種類の資産が売られ、綿は 6 月に入って大暴落し、銅先物も 4 月から 30% ほど下落しました。

パウエルとボルカーは似ている

6 月、パウエルは金利を 0.75% 上げました。そして 7 月も 0.75% 上げる予測が出ています。ではボルカーは 1979 年にどのくらい金利を上げたでしょうか。

April 17 ... 10.25%
July 20 ... 10.5%
Aug. 15 ... 11.0%
Sept. 19 ... 11.5%
Oct. 8 ... 13.0%
Oct. 22 ... 15.5%
Nov. 20 ... 14.0%

1 年に 3.75% も上げています。ボルカーがタカ派と言われるゆえんです。1980 年は金利がジェットコースターのように動いた時代でした。

Feb. 15 ... 15.0%
March 18 ... 20.0%
May 15 ... 11.5%
June 5 ... 8.5%
Aug. 7 ... 10.0%
Sept. 16 ... 11.0%
Oct. 13 ... 12.0%
Nov. 21 ... 18.0%
Dec. 5 ... 20.0%
Dec. 29 ... 18.0%

Source: Fed Funds Rate History: Its Highs, Lows, and Charts - The Balance

1979 年 10 月、ボルカーは 2.5% 金利を上げました。今と当時の金利を単に比較することはできませんが、低金利の時代で 0.75% 上げたパウエルは十分ボルカー的といえます。

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