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新元号・令和の意味を万葉集から理解する:令は「良い」を表す漢字!

新しい元号「令和」は万葉集巻第五の梅花歌を出典としています。万葉集は日本最古の和歌集で、その作者は一般の人から貴族、皇族、天皇まで幅広く、ある意味で最も多様な作品と言えます。

令和という名称は、歌人(和歌を作る達人)の大伴旅人作という説のある「梅花歌」の序文を由来としています。

時に、初春の令月にして、気淑く風和ぐ。梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす。

この文の「令月」と「和ぐ」の漢字を合わせて「令和」となります。この文の意味は次のようになります。

折しも、初春の素晴らしい月で、空気は清く風は穏やかである。梅は鏡の前の化粧のように咲き、蘭は女性の匂い袋のような香りである。

「令月」とは良い月という意味で、「和ぐ」はやわらか、穏やかという意味。つまり令月は「良くやわらか」という意味です。令月という言い方は古風に感じられますが、「令子」「令華」「令佳」「令司」「令治」という名前を見ると、漢字の上につく「令」も違和感がなくなるでしょう。

令和は中性的な自由さを意味するかもしれない

令和という言葉は「良い」「穏やか」を意味しますが、ここでは前後の文脈からもう少し深く考えてみましょう。まず「気淑く」と「鏡前の粉」を見てください。それぞれ「空気は清らか」「鏡の前で化粧をする女性」を意味します。

淑は淑女という言葉があるように清らかさや尊さを感じさせる文字です。また、鏡前の粉は女性の白粉(化粧)で、この序文は白い梅の花を白粉にたとえています。

巻第五の梅花歌全体は梅をテーマにしており、その梅の花を女性の美しさや尊さとつなげていることから、令和という言葉そのものに女性的な面が色濃く出ていると考えてもおかしくありません。

しかし原文は漢文であり、漢文は男性的なものです。「天を蓋にし地を坐にし、膝を促け觴を飛ばす。」などの表現も男性的です。つまりこの一節は漢文という男性的なものに女性的なものを入れた、極めて中性的な作品なのです。和という文字もそうしたバランスを暗示します。

令和の時代は誰も想像できない神秘的な時代になるかもしれない

そもそもこの梅花歌は万葉集でも特殊な節で、自然の雄大さと人間らしさの中間をうまくとらえたような幻想を感じさせます。三十二首の三十二という数も2のべき乗(どこまでも2で割りきれる数)で神秘的。

梅花歌という神秘的な節を象徴する言葉が「令月」です。「令月」は「時に、初春の令月にして」というインパクトのある出だしを作っており、「令」はまさに梅花歌を代表する漢字と言えるでしょう。

つまり「令和」は万葉集の神秘的な文脈、わからないことの多い時代への憧憬を暗示するのです。日本が世界で初めて、そしてまた世界史上最速で超高齢社会になること、インターネットと人工知能で社会の変化が速くなっていることをふまえると、確かに時代は神秘的になっていると言えます。

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