ご家庭様から「一対二は個別指導って言わない(怒)」と相談されました(イラストつき)

イラストふりかえり

少し前、家庭教師をやらせていただいているご家庭様からこんなご相談を受けました。

あのう、うちの子が通っている個別指導塾、最初は一対一だったのに最近になって一対二になったんですが

そうなんですか。

一対二ってどう考えても個別指導って言わないよね? 家庭教師だったら個別指導って言えるけど。あ、一対二っていうのは先生一人が生徒二人を面倒みるって意味ですよ。私、こう見えて太宰治じゃないですよ。

太宰治そっくりですが太宰治じゃないことはよくわかっています。最近、コストの関係か一対二の個別指導が流行っています。最初はおそらく塾ができたばかりか生徒が少なかったかで一対一で運営していたのだと思います。一対一から一対二に切り替わって、子どもと親御さんが不信感を持つことは残念ながら比較的よくありますね。

いやまあこんなこと家庭教師の先生に言ってもなんですが、最初は一対一だったのに一対二になるって、なんか損した気分ですよ。料金は変わっていないのに、先生の指導が半分になってしまうわけだからね! くっそー。こうなったら拡大してやる!

………。

料金と授業内容にもよりますが、個別指導塾の多くは(言い方が少し悪いですが)薄利多売で経営しているので残念ながら一対二は現在デフォルトになっています。一対一の個別指導はほとんどないか、あっても授業料が相当高いので、個別指導と言ったら一対二か一対三と考えたほうがいいかもしれません。

………。

……。

…。

一対三はあかんやろー!!!

個別指導塾は一対二がデフォルト

上のイラストふりかえりで記したように、個別指導塾の『個別指導』は基本的に一対二です。なので一対一と期待していると後でがっかりすることになります。これは経営上仕方ないことで、一対一にすると赤字になって経営があっという間に破綻します。

真の意味での個別指導は家庭教師です。家庭教師は家庭にお伺いして指導するというスタイル上一対一が前提となります。

当いろは進学会は家庭教師という商品を売っているためランニングコストがほとんどかかりませんが、塾の場合は事務所の家賃と維持費だけで莫大なお金が毎月とんでいます。

一対二の個別指導って個別指導と言えるか?

塾によって、あるいは授業によって異なりますが、一対二でも基本的に個別指導と言えます。大手の個別指導では一人の生徒が解いたり作業したりしている間に、別の生徒を指導するようにします。常に一人を作業に当たらせて、常に一人を教えているのです。

こんな感じです↓。

はい、じゃあ一郎くんは連立方程式のこの問題をやっておいてね。

わかりました。

はい、じゃあさっきまでやっていた図形の問題の答え合わせをしようか。わからない問題があったら解説するよ。

2番目の問題がわかりませんでした。

一対一で出てくる隙間時間を別の生徒に振り分けるという形です。これは経営的にはとても効率のいいやり方で、今後もしばらく続くでしょう。しかしこのやり方ではその子に合わせた理想的な指導はできません。

実は、家庭教師はたった一人の指導においても暇な時間はほとんどできず、授業時間中は常に大忙しです。個別指導塾が一対二を個別指導と掲げるために前提としている隙間時間はそもそも存在し得ないのです。

一対一と一対二の指導で出てくる授業の質の差

ここで一対一にあって一対二にはない(出せない)ものをリスト化してみます。

  1. 生徒が解き終わった後、生徒の希望する解説がすでにできている。
  2. 生徒が希望する時に希望する解説ができる。
  3. 質問時間と解答時間の調節ができるため、授業の中身を生徒のスケジュールに合わせて変えられる。
  4. 競争相手と言えない他人を意識する必要がない。

大学受験の高校数学120分の授業を例にとって説明すると、120分で扱える問題は最大10問です。どこを受験するか、どのくらいの実力かで扱う問題数は変わってきますが、だいたいこのくらいが限界。

一対二で指導した経験もあるのでわかりますが、一対二の場合、解説の半分は生徒が解き終わった後に行うため、20分ほどが先生側の準備で消えます。グラフを描いたり、式を書いたりする時間ですね。

これは一対一において発生しないロスです。なぜなら一対一では生徒が解いている間にあらかたの準備を済ませるからです。それが一対一の最大の強みと言っても過言でない。

なるほど、一対二だと本来その子の解説にあてる準備時間がとれないから、答え合わせが終わった後に先生がいちいち解説の準備を始める感じになるというわけか。

はい。問題数と難易度と教科によって異なりますが、120分の数学であれば20分はムダな時間として消えるのが経験則です。

また生徒が希望する時に希望する解説ができます。一対二の場合、「あ、ここがわからない。解説がほしい!」となった時でも、先生は迅速に対応できません。なぜならもう一人を指導しているからです。

これは当事者になってみると本当によくわかりますが、一対二で指導を受けている多くの生徒はかなりの時間を、先生が自分の席にやってくるのをただ待っているだけに使っている。器用な子はそうした空白時間を嫌って別の問題を解いたり、もう一度考えたりしますが、みんながみんなそういうわけにはいかない。

また一対一は質問時間と解答時間の調節ができます。例えば化学の授業では、通常時は質問時間を多めにとり、試験前は解答時間を多めにとります。どうしても通常時は解説が多くなり、テスト前は問題演習が多くなるからですね。

しかし一対二ではこういった臨機応変さはなかなか出せません。解説を多くとらないといけない子を二人受け持った場合を想像するとおわかりいただけると思います。

また一対一では先生がついている別の子に変な意識を持たなくてすみます。これが意外とやっかい。入塾したての頃はなにもかもが新鮮で、そのもう一人の子の存在もたいして気にならない。しかし慣れてくるとだんだんストレスがたまってくる。

(自分が質問しようとしているのに、なんでこのタイミングで向こうも質問してくるんだよ! さっきも質問したばっかじゃないの! 空気読んでよ!)

みたいに一対二の短所が目立ってくるのです。

結論: 一対二の個別指導は個別指導と言えるが、授業の質としては一対一のほうが良い

一対二の個別指導の授業の良し悪しは子どもにもかかっている

以上から一対二の授業を充実したものとできるかどうかは、先生のみならず生徒にもかかっていると言えます。先生の時間のやりくりには限界があるため、生徒はその一対二の短所を理解した上で、

  1. もう片方の子のためにも、ちょっと調べればわかるようなものは質問しないようにしよう。
  2. もう片方の子が先生を独占している時、時間をムダにしないように別の問題を解こう。

といった姿勢をある程度持つ必要があります。特に1番目。これを身につけないともう片方の子に「空気読めよ」と思われてしまうのです。

今までさんざん一対二は一対一に負けている的なことを言ってきましたが、一対二にしか出せない持ち味もあることは事実。それがこの「空気を読むこと」。先生を共有するもう一人の生徒をいい意味で意識することで、2番目の「授業時間を無駄にしない」癖がだんだんついてきて、普段の勉強にも活かされてきます。