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中学受験小説・第4話「競争と傲慢」その3(善悪の区別)

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連載小説ペンは剣よりも強しは実話にもとづいて書かれた受験物語です。受験生やそのご家族だけでなく、仕事で成功したいビジネスマン、人間関係でうまくいかないと悩んでいる方もぜひお読みください。究極の競争を生きていくためのエッセンスがぎっしりつまっています。

前回の話:第4話「競争と傲慢」その1(ビリからの再出発)

これまでのストーリー

「ペンは剣よりも強し」全話目次(第1話〜)
第4話「競争と傲慢」その1(ビリからの再出発)
第4話「競争と傲慢」その2(劣等生の仲間)

第4話「競争と傲慢」その3(善悪の区別)

金本はあいかわらず静かだったが、また休みがちになった。登校しても午後だけという場合が多かった。しかし不登校になっている人は学年に五人以上もいて、学級崩壊も進行していたから、金本がいないことをあれこれ言う人は少なかった。

ある日、席替えが行われた。真一郎は亜紀や慎吾と遠くの席になり、福沢の近くになった。最悪の状況だった。これが学年末の三月まで続くと思うと吐き気がした。この頃から真一郎の成績は下がり、塾の席順はいつもビリかその一つ上くらいという有様になった。

そして慎吾はそっけない態度をとるようになった。貴重な時間を使って彼の家に遊びに行くと、真一郎の知らない子どもがいつもいるようになった。彼は堀田という一つ年下の少年で、粗暴で口が悪く、ゲームのカセットを乱暴に扱っていた。

堀田がいる時はいつも面白くなった。慎吾は堀田につられるように自分のカセットを乱暴に扱うようになり、誰かの悪口を言うようになった。二月のある日、三人は慎吾の家の近くの公園でサッカーをした。サッカーをしている間、慎吾は金本の話をした。

「あいつ気持ち悪くね? なんで学校に来ないんだよ」

慎吾の辛辣な物言いに驚いた。堀田と遊ぶようになって何かが変わった気がする。福沢たちにいじめられないように、誰かにゴマをすっていたから、弱い者をいじめる側につくことにためらいがなくなったのかもしれない。

「いじめられているから来ないんだよ」

「気持ち悪い」

慎吾はもう一度言った。

「何が?」

とっさに反抗していた。

「何が気持ち悪いのか、俺にはわからないけど」

すると慎吾と堀田は顔を合わせて笑った。堀田は真一郎のほうにサッカーボールを思いきり蹴飛ばした。そのボールは腕に当たり、近くを転がった。堀田はそのボールを取りに行くと、「うい」と言いながらボールを真一郎の顔めがけて投げつけた。

ボールが顔面に当たり、無様にこけた。

「どうしたよ、そんなでコケるなよ」

慎吾はそう言ってボールを再び真一郎の顔面に当てた。鼻に直撃して、鈍い痛みが顔面に伝わった。いろいろなことを一度に思いだした。この頃、真一郎はある男子とある女子とよく話をするようになっていた。この二人は中学受験生で、それぞれ別の塾に通っていた。この三人はいい意味でも悪い意味でも目立つようになった。計算が速く、真面目な生徒から尊敬されるようになった。

この女子は塾の教材を学校に持ってきて、真一郎に何かたずねることがあった。そうして中学受験の話を身内だけでする。しかし今までは、この学年で一番計算が速かったのは慎吾だった。

中学受験生が真面目な生徒たちの中心に居座るようになって、慎吾は面白くない気分だったのかもしれない。そこに堀田という知り合いが突然できて、ここぞとばかりに復讐しているのかもしれない。秋頃、つまりこの三人が集まるようになった頃から、慎吾は元いじめられっ子にして現在いじめっ子になっている人たちと一緒にいることが多くなっていた。

真一郎は何も言わずに、その場を後にした。慎吾と堀田が何かを言っていたような気がするが、ほとんど覚えていない。ただ不愉快で胸くそが悪かった。

翌日、金本はめずらしく朝から学校にきた。二時間目の授業が終わり、三十分の休み時間になった。次の三時間目の授業は視聴覚室に移ることになっていた。他の生徒は短い時間というのに、そして寒いというのに外でドッジボールをして遊んでいた。真一郎は教科書を持って視聴覚室に行った。視聴覚室は二つの部屋に分かれている。大部屋と小部屋で、小部屋には音声や映像を流す機器があり、ちょっとした秘密基地になっていた。

大部屋の席につくと、小部屋のほうから声が聞こえた。威圧感と嫌な感じのする声だったので、気になって扉のそばに立ち、気づかれないように聞き耳を立てた。月島と野口という二人の女子が、誰かをいじめているようだった。

「なんで学校に来たんだよ!お前なんか顔も見たくないんだよ。帰れよ!」

月島は、普段は物静かだが、陰湿で女子たちを裏でまとめているような人間だった。

「なんかしゃべったらどうなの?あんた本当気持ち悪いよ」

と野口のがさつな声が聞こえた。野口は慎吾と同じく、最近いじめっ子にすり寄っている人間だった。実にこのクラスは、いじめられっ子がいじめっ子に変身する不思議な教室だった。それから五分、二人な泣いてばかりいる金本らしき女子を執拗にいじめていた。掃除用具入れの扉が開く音が聞こえた。

「ここに入ってなよ。ずっと入ってさっさと消えろ」

ガタンガタンという音が聞こえる。二人はどうも掃除用具入れに金本を閉じこめているようだった。すでに真一郎は怒りのあまり、胸の鼓動が高まって血の気が引いていた。

(なんなんだよこのクラス…なんなんだよこいつら)

第一、野口は半年くらいまで他の女子にいじめられていた。いじめられている人間だったら、いじめられることがどれだけ苦痛かわかるだろうに。このクラスはどうして被害者が加害者に回って、さらにひどい仕打ちをするのか。

慎吾もそうだ。慎吾も強者にペコペコしていたが、最近はだんだん生意気になって口が悪くなってきた。そして怖くなった。玲香や亜紀、今はおとなしい男子たちも本当はこういう人間なのだろうか。いじめているやつは大嫌いと言っていた亜紀も、自分が知らないところで人をいじめているのか?

慎吾はずっと友だちで、何年も同じ時間を共有し、家に泊まったこともあった。だが今、過去の面影はあまりない。人間は変わってしまうのか。

真一郎は視聴覚室小部屋の扉を勢いよく開けて、壮絶ないじめの現場にズカズカと入っていた。

「お前ら!何やってんだよ!」

月島と野口はひるんだ。

「なにやってんだって聞いてんだよ、おい!」

掃除用具入れに金本が入っていて、ホコリだらけのモップに金本の顔が埋まっていた。野口は雑巾を持っていた。真一郎は野口の手から雑巾を奪い、それを野口の顔に投げつけた。掃除用具入れからほうきとモップを出して、金本を中から出した。だが金本のことを案じる心の余裕がなかった。この少年はいつもこの有様だった。一度火がつくと暴走し、徹底的にその場を破壊してしまうのだ。

「お前らみたいなのがいるから、この学校はどうしようもねえんだよ!」

二人は恐怖と驚きで何も言わない。真一郎の目に月島の教科書が見えた。音声機器の上に月島の道徳の教科書が見えた。真一郎はその教科書を奪いとった。

「何するの、返してよ!」

「黙れ!」

真一郎はその教科書の表紙を破り、床に投げつけて上履きで踏みつけた。

「お前がやったことはこういうことだろ!だいたいお前、前からうざかったんだよ!俺のことも陰口叩いてたの知ってるんだよ!」

そこに別の女子たちがぞろぞろとやってきた。授業まで五分という時刻だった。真一郎はかまわず野口の教科書も破り、いつからあるかわからない濁った水の入ったバケツにぶちこんだ。

「前からお前ら金本をいじめてただろ。お前ら、本当はみんなから嫌われてるんだよ。なんか言えよ!」

ざわざわした観衆はすでに二十人くらいになって、その中から亜紀たちがやってきて真一郎を無理やり小部屋から引きずり出した。この日、どうしてこんなに怒りをぶちまけたかわからない。前日に慎吾から侮辱されたから? 金本に同情しただけとも思えない。

先生に怒られる前に、亜紀たちに怒られた。真一郎は「謝らない」「警察に言う」「父母会と校長に言う」といきり立って、結局先生はその日の授業を中止し、緊急ホームルームを開いた。真一郎はそこで月島と野口の悪行を全員の前で説明した。

真一郎は堂々とふるまっていた。福沢たちがもう自分になにもしないことを悟っていたからだ。福沢たちは興味がなさそうに、机に伏して寝ているふりをしていた。何かがあると加害者に反逆して怒り、教室をホームルームに持っていくやり方に、ほとんどの生徒は気づいていた。そして逆上すればするほど「警察に言う」という身もふたもない言葉を言われることにうんざりしていた。

放課後、池内と二人で帰ることになった。

「まあ、明日になったらみんな忘れてるよ」

と言いつつも、玲香も少し不安な表情をしていた。

「なんか私も最近しんどいわ。うちのクラスありえないって。最近は幼稚園の時の友だちと遊ぶようにしてるわ」

「池内もそんなふうに思うのかあ」

「まあ、あとちょっとでクラス替えだから、それまで我慢するけどさあ。最近は女子が陰湿すぎて。月島って人、相当意地悪だよ」

「俺なんか中学受験するってだけで悪口言われた。たまたま体育の時に聞いた。あいつ何様なんだよ」

「金本もたぶん学校に来なくなるよ、きっと」

この頃、学級崩壊は進んで毎日が戦争だった。悲しみと怒りがぶつかり合う日が続いて、池内や亜紀は昼休みに音楽室や中庭といった平和な場所に集まるようになった。音楽室は音楽の才女がいつもいて、その子はどこかのほほんと過ごしていた。疲れている人たちはそういう平和な人間と一緒にいることで、クラス替えまでの残り時間をなんとか過ごすようにした。

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