トランプ思考|ドナルド・トランプ大統領の成功哲学を理解する

「トランプ思考(PHP研究所、ドナルド・トランプ著、月谷真紀訳)」は面白い示唆をたくさん含んでいます。トランプ大統領を支持する人もそうでない人もこの本から学ぶことは多いでしょう。本書は次の点をとりわけ強調しています。

  • 結論を簡潔に述べる
  • 忍耐強く努力する
  • 常識を身につける
  • 直感力と先見性に従う
  • 悪人はたくさんいる
  • 芸術家になろう

注:「トランプ思考」より本文を引用する。参考文献はすべて「本書」と記す。

結論を簡潔に述べる

トランプ大統領は「アプレンティス」というアメリカの番組で有名になりましたが、その番組でトランプにクビにされた者は「結論を簡潔に説明する」スキルを持っていませんでした。

「アプレンティス」を観た人なら気づくだろう。言葉の無駄を最小限にして事実を述べられる見習い社員が有利になる。
本書p96

彼の前では、プレゼンテーションや自己紹介も簡潔さが求められる。

五分以内でプレゼンテーションを行う練習をしよう。三分以内で自己紹介する練習をしよう。
本書p94

トランプ氏はフェイスブックでもブログでもなく、ツイッターを好んで使っています。ツイッターは持論を短く発信するに最適なツールです。この点は主張と行動が一致しています。本書も結論をコンパクトにまとめたエッセイ集です。

私がこの本を読んだのも、トランプ氏がこのスキルを強調していたからでした。このサイトの記事とエッセイを読んでいる人は気づいていると思いますが、私も結論を最初に言う習慣があります。そしてこのサイトはそれを特徴と強みにしています。私自身、長ながらとした前置きは苦手です。

忍耐強く努力する

本書を一言でまとめあげるなら、「忍耐と努力は最重要課題である」ということです。引用するまでもなく、本書はかなりの紙面を使って「ハードワークは不可欠である」と述べています。

本気を出す努力をしよう―毎日だ。…ただ一点を見つめて行動あるのみだ。意識的な努力がどれほどの成果を生むかに驚くはずだ。アレクサンダー・グラハム・ベルの言葉で私がいつも肝に銘じていることがある。「手元にある仕事に心を集中させよ。太陽光線も一点に集めなければ発火しない」。
本書p67-p68、途中省略部分あり

「光はエネルギーを持つが、集めないかぎりたいしたことはない。同じように人の努力も一点に集中しないかぎり、ろくなものにならない」という考えは、私も大学生のときに聞いて納得した記憶があります。確か力学の先生だったと思います。

そしてもう一つ、大学生のときに聞いてハッとさせられた言葉があります。「努力しても成功するとは限らないが、怠け者は永遠に成功しない」。

常識を身につける

トランプ大統領を支持しない人はこの意見に拒否反応を示すかもしれない。つまり「本人がそもそも非常識じゃないか」とツッコミたくなる人がいてもおかしくない。

しかし本書が言いたいことは、そしておそらくトランプ大統領が思想として持っているだろうことは、常識も非常識も、成功するために必要なことも、まずは常識があっての話ということだ。

彼のツイートや発言にイライラしている人に、特に本書をおすすめします。過激な本能の裏に、極めて理性的な常識があることをすぐに理解できるでしょう。

これは私の印象ですが、トランプ氏はおそらく常識と非常識の人格をたくみに使いわけることで成功した経営者でしょう。

直感力と先見性に従う

私たちは脳をほとんどいかしていない。だからこそ無意識レベルで働く、つまり考えようと思って考えているわけでない本能的な部分である直感力と先見性に従う必要があります。

もちろん経験は大切であり、本書でも「知恵を身につけたければ、まずは知識と経験が必要だ」(p54)と述べています。しかし成功に向かっていく人の多くは日常的に、知識と経験の蓄積に励んでいるでしょう。

競争に勝つためには、グレーゾーンである運(=直感力)を味方につけなければいけないのです。

悪人はたくさんいる

「人に警戒しろ」と本書は説きます。全額を一人に投資することは愚かであり、そもそもやってはいけない(p210)。本書は「最高の人間を集めよ」と「何があろうと、警戒を緩めるな」で二度、むやみに他人を信用するなと言っています。

訳者の文章がうまいからか、この部分はトランプ氏の感性を強く語っているような印象を受けます。

彼が一定の猜疑心を維持してビジネスにあたっていることは、自分のビジネスに息子と娘(イヴァンカ・トランプ氏)を起用していることからもある程度わかります。子どもが自分を裏切ることはなく、そもそも自身も親のビジネスを受けついで発展させた経緯を持ちます。

芸術家になろう

「人生はアート、仕事はアートだ」の章で、大統領はピカソを例にあげています。

彼(ピカソ)は自分の作品の価値がわかっており、それに対して言い訳をしなかった。…ある人がアトリエを訪れ、絵の前に立ってたずねた。「これは何を表現しているのですか」。ピカソの答えは「二十万ドルです」だった。彼は真実を語っており、その言葉に曖昧さはかけらもない。
本書p69

トランプ氏はピカソ、ミケランジェロ、ベートーヴェンを偉大な芸術家と尊敬し、彼らの情熱と忍耐は経営者に最も必要な才能であると考えています。

芸術家はそもそも才能を持っていますが、限界を越えようとする姿勢や妥協を許さない精神に芸術が宿ります。そして金に交換可能の価値を作る。ビジネスマンも同じように、忍耐強く挑戦するところにビジネスの価値があり、おそらくその時にしか成功しない。

ちなみに本書は、アートという概念をふんだんに使っています。

あなたがアートを愛していてアートではお金が稼げないとしたら、やがて世の中はすべて、アートでさえもビジネスなのだと悟るだろう。だから私はウォーホルの「儲かるビジネスは最高のアートである」という言葉が好きだ。それは事実なのだ。そして私が自分のビジネスをアートと考え、情熱を込めて取り組んでいる理由もそこにある。
本書p122

終わりに

私は本を終わりから読みます。本書の終わりにトランプ氏が推薦する本のリストがあります。本編を読むまでもなく、彼がチャーチルをとりわけ尊敬していることがわかります。

チャーチルは歴史が好きで、絵を描くことが好きでした。そしてトランプ氏はビジネスをアートのように捉え、戦争の合間に絵を描いていたチャーチルを尊敬しているのです。

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