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川上量生氏の「ニコニコ哲学」を読んで考えたこと〜競争はやっぱり良くない

みなさんはドワンゴという会社をご存知でしょうか? ドワンゴはニコニコ動画を運営する会社で、川上量生氏が創業しました。その川上氏の「ニコニコ哲学」という本を読んだので、なんとなく考えたことをここに残します。

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メディアがオープンな形で成長すると、多様性はむしろ減る

この言葉はユーチューバーの瀬戸弘司さんの動画で聞いて「そうだよな〜そのとおりだ!」と思ったことがあります。ひょっとしたらその動画は、この本を読んだ瀬戸弘司さんの感想だったかもしれません。

この本で一番夢中になって読んだセクションは、コンテンツの多様性に関するところです。

例えばある小説投稿サイトを見てください。ランキング上位にある作品、書籍化された作品は、同じような傾向にあると気づきます。ニコニコ動画もYouTubeも、初音ミクが人気だったらみんなが初音ミクの動画を投稿し、マインクラフトがきたらマインクラフト、青鬼がきたら青鬼というふうに、みんなが一斉に同じ方向を向くところがありますね。

YouTube、ニコニコ動画、インスタグラム、アマゾンといったユーザーがコンテンツを投稿していくメディアは、ランキングやいいね数といった「ユーザーを競争にかりたてる」システムを持っているので、ユーザーはマニアックなものから一般的な方に向くのです。

ユーザーがあまりいない時期は、メディアと初期のユーザーが一緒に成長するため、ユーザーはのびのびと作品を投稿できます。しかしユーザーが増えてくると、ランキング上位にのるためには多くの人から支持される数少ないネタでいくしかない。そうして多様性は減っていく。

ニコニコ動画を運営しているからこそ、この事実を直接痛感できるのだと思います。そして、ここからは私の考えたことになります。

競争はないほうがいい

このメディアで私が毎回唱えている結論は同じですね。競争はないほうがいい。

競争は一定までは有効に働きます。競争を極限まで避けようとすると共産主義的な方向に流れてしまうかもしれません。無競争と共産主義は根本的に異なりますが、貨幣の流通という経済を通して同一になっていくように思えます。

競争があるからこそ、サービスは進化する。競争がなければ人間は怠けるので、サービスも劣化して文明も廃れる。

しかし完全競争がすべての参加者の利益(の総和)をゼロに近づけるのはほとんど明らかです。このサイトを運営している私自身、インターネットのサイトどうしで毎日行われている不毛な競争の餌食になっている、かもしれませんね。

そして完全競争はおそらく多様性を減らしてしまう。正確に言えば多様性が減っているように見えるようになる。もっと正確に言えば、多様性を維持しようとするコンテンツ制作者は経済的に損する。

「多様性が減る」という言葉をより正確に言うなら「多様性を維持するコストがコンテンツ制作者にとって増大する」ということです。プラットフォームには関係ないことですね。文化は多様性を拡大するが、多様性の少数派に属するコンテンツ制作者は必ず損し、すべてを管理するプラットフォームは平等に利益を吸収する。これがルパード・マードック氏とFacebookの対立の根っこにある原因です。

競争に勝つための方法

経済で勝つための原始的な手段は2つあります。一つはみんなに従うこと。トレンドに乗るという手段です。もう一つはトレンドに逆らってマニアックなものを扱うこと。前者はレッドオーシャンを気合で根性で勝つこと、後者は狭いブルーオーシャンで勝つことを意味します。

コンテンツ制作者にとってはどちらも苦しいですね。動画、イラスト、小説、その他あらゆるコンテンツを作っている人は、もうわかっていると思います。どっちも苦しい。レッドオーシャンも疲弊する。でもブルーオーシャンは人気がないから割に合わない。

この悲劇的な状況で競争に勝つためには、次のどちらかを選ばないといけません。

  • そもそもコンテンツを作らない
  • 異なるメディアを作る

一番いい選択肢はコンテンツを作らないこと…と言ったら身もふたもないですが、私はそれが一番いいと本気で思っています。これはコンテンツに限りません。小売、外食、流通といった産業は尋常でない競争のただ中にいます。スタンダード・オイルが原油の「慈悲深い支配者」として無数の会社を吸収していったのも、あながち間違っていなかったでしょう。

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もう一つの選択肢は異なるメディアを作ることです。コンテンツで勝負するのでなく、コンテンツの枠組みで勝負する。

例えば、音楽にはクラシック、ロック、フォーク、ジャズといったジャンルがあります。それぞれが独自に進化し、または融合して成熟しているので、この辺で勝負しても競争は免れないうえに、ロックのビートルズになることは不可能なわけです。何事も初期の支配者が永遠に名前を残し、しかもかなりの利益を持っていく。

とすれば違う文化を自分たちで作っていくしかない。新しい文化を作るのです。私は音楽にくわしいので想像もつきませんが、衣食住ではまだ未開拓なものがあるそうな気がしています。もちろんインターネットも。例えばブロックチェーンを利用したソーシャルメディアなんてありませんよね(たぶん)? ブロックチェーンを利用した文化というものが成立するかはわかりませんが、もしあったら、それを初期に作ったコンテンツ制作者はきっとブルーオーシャンの利益をあずかるでしょう。

ところで、まったく新しいカテゴリーというのはだいたい新しい技術をもとにして作られます。個人的に可能性がありそうだと思うのは、ブロックチェーンと音声検索ですが、どうでしょうか。

コンテンツの過当競争で悩んでいる方は、新しい技術に目を向けるといいと思います!

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