学校で教わらない資本主義と独占(第1回)「選択と集中」:勉強の苦手な人は勉強しなくていい理由も合わせて考えよう

学校で資本主義を教わることは少ない。しかし資本主義を理解しているかどうかは人生に大きな影響を与えます。誰しもお金を持ちたいし、自分だけは優位に立ちたいと思う。学校はこうした欲を肯定しないため、資本主義は表面的に解説されるだけで、本質はほとんど明かされない。

今回は「選択と集中」をテーマに、資本主義とその進化の本質を解説していきます。

パレートの法則

パレートの法則は経済や金融に登場する考えで、ざっくり言うと「売上の8割は商品の2割でたたき出す」というもの。例えばあなたが100種類のジュースを売るとしたら、結局売上の大半は20種類のジュースだけで出てしまうということ。残りの80種類は売上全体の2割ほどしか貢献しない。

パレートの法則の図

この法則は売上と品数だけでなく、「二つの要素が互いに作用する状況」を分析する時に引用されます。例えば小規模会社の数は日本で80%ほどありますが、売上(資料より製造業付加価値額とした)は10%ほどです(経済産業省・「最近の中小企業の景況について」より)。

20%しかない大企業(小規模会社でない会社・広義の大企業)が90%の売上を出す。ピッタリ80:20という比になりませんが、わずかなものが大きなものを作るという考えは成り立っています。ここまでは退屈な説明ですが、この法則がみなさんの大好きなインスタグラムやツイッター、YouTubeといったプラットフォームのフォロワー数に適用されるとしたら面白いと思いませんか?

YouTubeのユーザー数はおよそ6,000万人です。毎月変化していますが、おおむねこの数値でしょう。

参考:日本経済新聞「ユーチューブ、日本で10年 ネット人口の8割が視聴」

ではフォロワー数(YouTubeでは登録者数)のランキングはどうなっているでしょうか?ここでは有名YouTuberのヒカキンさん、はじめしゃちょーさんの登録者数を見てみましょう。2019年2月現在、二人はそれぞれ700万人、750万人の登録者数を抱えています。重複はかなりありますが、単純に足すと1,000万人を超えます。

登録者数が多いチャンネルをあげてみましょう。以下、敬称略。データは2019年2月現在、YouTubeより確認。

チャンネル名 登録者数(概数)
はじめしゃちょー 750万人
HikakinTV 700万人
Yuka Kinoshita 500万人
フィッシャーズ 500万人
avex 450万人
東海オンエア 400万人
SUSHI RAMEN 380万人
水溜りボンド 370万人
AAAjoken toys 350万人
SeikinTV 350万人

参考:PewDiePieさん…8,500万人(世界一)

多くのユーザーが複数のチャンネルに登録するため、単純な合計数を見ても不正確ですが、上記のチャンネル登録者数を単純に足すと全ユーザー数の60%に及ぶ。すべてのユーザーがチャンネルを開設しているわけでないものの、相当な数のチャンネルがある中でたった10のチャンネルがのべ4,000万人分の登録者数を抱えている。これはどういうことでしょうか?

世界規模で見ると、ゲーム実況で有名なPewDiePieさんは8,500万人の登録者数を誇っています。この数値は日本のYouTubeユーザー数を超えている。たった一人のYouTuberが一国のユーザー数を超えてしまっている。

都市の人口と国の生産力も同様。47都道府県の20%、つまり9都道府県(東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県、千葉県、兵庫県、北海道、福岡県)の総人口は約7,000万人(総務省統計局・都道府県別人口と人口増減率より)。たった9県で人口の半分以上を集めている。

図表でみる世界経済(GDP編)~世界経済勢力図の現在・過去・未来:基礎研レターによると、主要9ヶ国(アメリカ、中国、日本、ドイツ、イギリス、インド、フランス、イタリア、ロシア)で世界GDPの7割近くのGDPを出しています。世界は200ヶ国近くもあるのに、その1割で経済のほとんどを生産している。

わずかな商品がほとんどの売上を出す。わずかな会社がほとんどの売上を出す。わずかなチャンネルがほとんどすべてのユーザーをフォロワーにする。わずかな土地にほとんどの人間が集まる。わずかな国でほとんどを生産する。これらはパレートの法則を根っこにした少数支配の結果といえます。

みなさんが気にするテストの偏差値もある種のパレートの法則が効いています。偏差値はそもそも少数の者が高い値を出すようにできているため、少数支配に見えるのは当然です。

参考:78:22の法則(ユダヤの商法)とパレートの法則からロングテール・マーケティングを考える

資本主義の本質:独占

資本主義の本質を解説するのにパレートの法則をうだうだ説明した理由は、「少数支配」すなわち「独占」が資本主義の本質だからです。

渡辺直美さんがインスタグラムの女王であり、ヒカキンさんがYouTubeを引っ張っていく存在であり、東京都が日本を支え、アメリカが世界経済の中心であるのは、わずかな存在が圧倒的なステータスを持ってしまうというパレートの法則による。この法則は経済のあらゆるところで効いて、歴史的にいくつかの独占企業を作りました。そしてそれらの会社は、経済の波すなわち産業革命そのものでもあったのです。

参考:経済の景気循環(四つの局面とサイクル)

時期 技術革新 主な企業
18世紀~19世紀 産業革命 -
19世紀半ば~19世紀末 鉄道・鉄鋼・原油 USスチール/スタンダード・オイル
19世紀末~20世紀前半 電気・自動車 GE・フォード
20世紀半ば~20世紀末 コンピューター・ソフトウェア IBM・マイクロソフト
20世紀末~21世紀 情報 Facebook・Amazon

独占禁止法は19世紀後半のシャーマン法が根っこにあります。シャーマン法は世界史で出てきますね。これは石油会社のスタンダード・オイルなどを解体するためにできた法律で、「大きすぎる会社」「市場を独占する会社」に容赦しないという風潮はここからできてきました。

資本主義

独占禁止法(通称)はその後もいくつかの会社を壊したり、制したりしています。裏返すと経済はいつもこうした少数の会社に支配されてきたということです。実際スタンダード・オイルはアメリカで90%以上の石油を生産していました(Chart: The Evolution of Standard Oilより)。

資本主義とはそもそもなんでしょう?国以外の会社や個人が財産を所有し、自由に取引して利益を追求する一連のシステムを資本主義といいます。ここで自由な取引がキーポイント。自由に取引して利益を積み上げることが許されているために、過去にためこんだ利益を使ってもっと利益を追求できる。つまり、成功すればするほど、もっと成功する。資本主義は正の循環を引き起こすシステムなのです。

非常に嫌な言い方をしましょう。勝ち組はもっと勝ち組になり、負け組はもっと負け組になる。これがこの資本主義世界のルール。

みなさんもツイッターやインスタグラムを使っていれば、フォロワーの多い人はどんどんフォロワーを増やしていくが、少ない人はあまり増えないという事実をなんとなく理解しているでしょう。同じようなことが世界規模、歴史規模で起きてきました。

ここまでで資本主義の本質が独占にあるとわかりましたが、それでは私たちは具体的に何をすればいいでしょうか?特に学生のみなさんは試験をクリアして、高校や大学に行くという課題もあります。独占した者だけが勝利するというルールをどう活かせばいいでしょう?

ナンバーワンとは根本的にオンリーワンである

答えは簡単です。オンリーワンになればいいのです。槇原敬之さんの歌は資本主義で生きていくためのシンプルな答えを言っていますね。

今最も成長している会社はAmazonです。Amazonは世界のEC(オンライン小売)を支配しつつあります。Amazonで買えないものってほとんどありません。買い物と言ったらAmazonですが、検索と言ったらAmazonでしょうか?検索はもちろんGoogleです。もっとも、その検索市場もAmazonはすでに進出していますが、市場規模から考えるとGoogleが検索の代名詞。

Amazonはオンラインショッピングを支配していますが、別にエアコンを作っているわけでも、ヴィトン顔負けの財布を作っているわけでもない。あくまでもECというジャンルに特化して、そこでナンバーワンになっている。

あなたの人生も同じようになるべきです。私たちは試験の点数で競ってきましたが、期末試験の結果などほとんど価値がない。国語の試験でいい点をとっても、化学の試験で悪い点をとっても、あなたの豊かな人生に影響しない。影響するのはせいぜい大学受験の結果で、どの大学に入るかも実はほとんど影響しない。

決定的に影響するのは、今のあなたが何を選んでいるかです。音楽家になりたいのでしょうか?だったらピアノの練習をするべきですよね。数学もちょっとは大事かもしれないけど、数学者になりたい人には勝てないし、負けがわかっている試合で勝った負けたのゲームをやっても意味がない。

選択と集中

スタンダード・オイルはそもそも石油ではなく、農作物の卸売から始まりました。しかしロックフェラーは精油というおいしい産業を見つけるやいなや、借金をして全財産を精油事業につぎこんでいきます。当時のまともな人間は「油を掘って何になるの?」と思っていたようですが、彼は石油の時代が来ると信じて、人生をその一点に捧げました。針のように小さい一点にあなたの全エネルギーを注ぐ覚悟はありますか?

かなり難しいようですが、実は私たちは全員その一点にたどり着かないといけないのです。もしある会社の会社員になったら、あなたの全エネルギーは社員になるという一点に注がれることになる。大学受験もそう。ほとんどの学生はセンター試験という一点にまず向かって、そこから二次試験に向かう。

Amazonは最初に本を売りました。本という一点に絞り、バーンズ・アンド・ノーブルというリアル書店と戦って勝った。本で勝ったら、別の商品も置くようになり、アメリカのオンライン小売を支配すると、クラウドサービスを支配し、それも済むとスマートスピーカーに進出して今に至ります。私たちも結局はこのように生きていきます。ある一点で自分の地位を築いて、それが済むとより高いレベルで地位を築いて…をくりかえして年を重ねる。

ある一定の期間に絞ると、私たちは常に一点集中との戦いになる。そこで重要なことは、「選択と集中」という戦略です。Amazonは最初からバッグを売っていたわけじゃない。最初はバッグや財布を切り捨てて、本に集中していた。天下のAmazonですら何かを犠牲にしている。まして個人の私たちが、何でもかんでもできると思ったら大間違い。

物理が嫌いな人はもう物理を一生懸命勉強する必要はない。物理という世界で勝ち目がなかったら、そんな科目はさっさと捨てればいい。音楽の才能がないなら、音楽の道に進むべきじゃない。もし体操という分野で生まれつき才能があったら、全エネルギーをそこに注ぐべきです。もし体操で失敗したとしても、その時はその時で考えればいい。

重要なことは一点に集中するということ。成功している人・会社はほぼすべて一点集中型です。イチロー選手はサッカーの練習をしていないし、FIFAに出場していませんよね。未来をつくるということは、ほとんどすべてを捨てるということ。捨てたくないと思った時点で負けが決定している上に、何も得られないのです。

ご家庭と学校の先生へ

今回この長い記事を配信したのは、私が個人的に今の教育に疑問を持っているからです。日本は主要先進国で最も労働生産性の低い国ですが、その原因は教育にあると考えられています。なぜドイツの労働生産性は日本より高いのかにあるように、ドイツの高い労働生産性は教育システムと関係しています。

ドイツはある意味で厳しい国です。12歳の成績で一生の進路がある程度決まる。自分の得意と不得意をそこで判断(というよりは強制的に判断を迫られる)し、合わないものはやらないという方針で、実務に応用がきくことを最初から勉強する。つまりドイツの教育は資本主義の鉄則中の鉄則、選択と集中という基本中の基本から教育制度を作っている。

学校や塾は、競争はさせるが競争の意味を教えることはほとんどない。だから子どもはイライラして、勉強は無意味だと反抗する子どもも出てくる。勉強は無意味だという意見に「いや、勉強は役に立つ」とまっとうに反論できる人間はこの世にいない。もしいたら、その人は妄想を抱いているか、尊大な嘘をついている。

勉強が役に立たないことは明らかなので、まずはそこから出発しないといけない。そして勉強という競争の意義を教えないといけない。勉強で勝つ意味とは、いい大学を出ること、または専門家になることの二つに一つでしかない。この二つに目的を見出だせない人は勉強しなくてもいい。そこを教えないと、子どもはドイツの学生のように自立しない。

いい大学に入らなくてもいいし、学者や技術者になりたいとも思わない人は勉強しなくてもいい。その代わり、絶対に負けないものを一つ作らないといけない。学校の先生はここまで踏みこんで説明しないといけない。

「勉強したくない?それもかまわない。ただし一つだけ条件がある。それは一つだけ得意を作って、そこで絶対的な勝者になること。それができない人間は結局何をやってもダメになる」

私たちはどうしてこの当たり前の現実を言わないのでしょう?大人になってみんなが気づくことに限って子どもに伝えないものの代表が、今回の「選択と集中」「勝ちたいならそれ以外で負けろ」という事実です。高校生のみなさん、特に高校二年生のみなさんは人生において「勝つために負ける」という戦略をとってください。受験直前期のみなさんは苦手な科目をすべて捨てて、得意な科目と分野に全エネルギーを集中させてください。勝つ人というのは、負けどころを知っている人です。

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