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教学社「医学部の実戦小論文」の評価と使い方

赤本で有名な教学社の「医学部の実戦小論文」は医学部受験の小論文対策の問題集です。

項目 評価
使いやすさ ★★★★
詳しさ ★★★★
おすすめ ★★★★
レベル 中〜上級
対象 高 2 以上

各問に入る前のレクチャーは必読

本書の最初に数ページの小論文レクチャーがあり、これが非常に役立ちします。小論文の意義と問題形式、そして解答の作成方法が丁寧に書かれています。

小論文は小論文特有の解答アプローチが必要で、これは本書のような参考書を読んだり、学校や予備校で先生から直接教わったりしないとなかなか身につかない。「自分はこんなふうに書きたい!」と思っても、それが小論文に必要な形式、書き方でなければいい評価は得られない。その意味で本書のこのレクチャーは、小論文に挑むすべての受験生に読んでほしいものです。

なおレクチャーの最後に学習法まで言及し、文章構造を把握したり文章を要約したりする言語的な力の必要性を述べています。

テーマごとに問題を分けている

本書は医療事故や少子高齢化社会といったテーマごとに問題を分けています。このテーマについてはよくわかっているが、あのテーマについてはまだよくわかっていない、記述する自信がないというように、医学部小論文は意外とテーマごとに得意不得意ができます。

本書のように問題がテーマごと整理されていれば、自分の苦手なテーマの問題を優先的に解くというやり方もできるでしょう。

また一つ一つのテーマについてある程度の背景知識を冒頭で説明しています。よって「インフォームド・コンセントってなに?」という方もひとまず基本的な医学的知識を身につけてから小論文の実際の問題に当たることができます。事例をふまえた説明も多く、知識ゼロの状態でも本書を一読すれば基本的な素養を得られるはずです。

一問一問の解説はやや短め

見開きのページの中に解答を収めているせいか、解説の詳しさや解答作成までのプロセスがやや短めで、人によっては「もっと解説がほしい」「どうしてこのような解答になるのかよくわからない」と思う人がいるかもしれない。

しかしこれも小論文(あるいは国語)の宿命で、要求される説明や解答プロセスの詳しさは読む人によってかなり変わってくるため、この点を一刀両断に評価することはできない。

志望校を明確に決めている人におすすめできるか?

ここが本書の評価を決める最大のポイント。医学部の問題は小論文も含めて傾向がある程度決まっています。もちろん年によって変わる大学もあるでしょうが、多くの大学はやはり過去問に沿った対策が一番重要です。

本書は国語の読解問題に近いタイプから、「理想的な医師とはどういう医師か?」といった抽象的な問いまでさまざまなタイプの問題を扱っており、受験生によって「この問題は受験校に絶対出ないな」と思う問題がかなり出てくるでしょう。そうなってくると問題がテーマ別に分かれているメリットも薄くなってしまいます。

以上から本書は受験直前期というよりは普段の小論文対策として使い、小論文に必要な背景知識や作成方法などをおおまかに理解する参考書として使うのが理想と考えられます。

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