Irohabook
0
60524

世界史で出てくる歴史上最も偉大な人物 10 人

世界史を読んで学ぶことは多い。今回は歴史上最も偉大な人物を 10 人選び、業績をざっくりふまえて私たちが参考にするべきことを考えます。高校倫理に出てくる人類史上最も偉大な哲学者7人という記事が多くの人に読まれるようになったので、この記事はその続きとします。

プラトン

プラトンはヨーロッパの思想を作った最初の哲学者です。プラトンはイデアというものをあげながら、物心二元論や合理論につながるようなアイデアを生みました。人の性格やあり方を分析し、国や階級の理想を説いた。

プラトンはアリストテレスを生んだことでも偉大かもしれない。

アリストテレス

アリストテレスは哲学と科学のあらゆる方面で業績を残した。ルネサンスで理想とされた万能人の究極はアリストテレスです。

私がアリストテレスを考えるときにいつも注目しているポイントは、知識よりも行動に意味があるという思想です。

あなたは本を読んでいるときなにをしているだろうか? 本を買って読んでいない人は、金をムダに使っている点で下に出てくるロックフェラーの成功哲学と対立することになる。しかし本を買って適当に読んで、なにも実践しない人は、18世紀までのドイツでしか通用しない詩人で終わってしまう。

アリストテレスは、徳とは習慣であると説きます。これらの考えをふまえると、アリストテレスの哲学では、成功の本質は行動と習慣にあると言えます。

イエス・キリスト

イエスの業績はキリスト教の普及にあります。世界史をざっくり解釈すると

  • 社会が哲学と宗教から始まり
  • キリスト教を中心とした政治システムが完成し
  • そのシステムが腐敗し
  • 宗教改革によって新しいシステムが生まれ
  • 科学革命と重なって自由主義が芽生え
  • 現代の資本主義と民主主義が完成した

です。世界史の大動脈はヨーロッパで、その基礎にキリスト教がある。現在のたくさんの古い教会があり、ヨーロッパの秩序と文化の根本をなしています。イエス・キリストが世界史をダイナミックに構成したと考えても、あまり違和感がない。

ルター

カトリックからプロテスタントへの転換はキリスト教の普及と同じく、世界史を変えました。ルターは宗教改革の担い手とされる人物で、ルターの反権力的な運動は権力をローマ・カトリックから別のなにかに移すことに成功した。これを宗教改革という。

さまざまな国で権力の移行はさまざまに行われましたが、それは最終的に資本家と地元貴族の支配を通じて、富の移行をうながした。ヨーロッパのプロテスタント系は真面目に働き、他の地域より早く産業革命をとげた。

ルターから学ぶポイントは、腐敗と堕落に立ちむかう勇気です。腐敗は一時的に富を生みますが、やがて富と権力を本当に欲している存在に奪われることを示唆します。

ニュートン

ニュートンは万有引力の法則と微分積分を発見しました。ニュートンは、人間が自然を支配できるシステムを最初に考えた学者といえます。

ニュートンは哲学者でもありました。しかし、それ以前の哲学者と違い、数学を操ったことで特に成功した。

それまでのあいまいな思考は、ニュートンの物理と数学という具体的な力にとって代わられたのです。

ナポレオン

ナポレオンはヨーロッパを一時支配した軍人。ナポレオンから学ぶことは次の 3 点です。

  1. ロシアに深入りすると倍返しされる
  2. 攻撃は集中させる
  3. 変革には限界がある

第二次世界大戦のドイツもナポレオンもロシアを契機に滅びている。ともに加えたダメージの何倍もダメージを受けている。

ナポレオンは選択と集中をくりかえして戦争に勝ちました。この戦略はあらゆる場面で有効です。私たちは複雑な世界に生きているので、物事を単純にとらえて、その一点に金と時間を集中させるほうが有利です。

ナポレオンは成り上がりも没落も早かった。ヘーゲルはナポレオンの活躍に心を奪われて自身も偉大な思想家になりましたが、そうした熱狂は一時的で、変革は時間の経過とともに苦痛のともなう現実になることをナポレオンは身をもって体現しました。

マルクス

マルクスは共産主義という思想をつくった哲学者。ソ連などの社会主義国はマルクスから影響を受けています。

大学一年生で西洋哲学史と東洋哲学史を学んだとき、どちらの教授も「アイデアは一人がつくる」法則を生徒に説明していた。マルクスはその代表的な人物といえます。

当時、共産主義・社会主義的な思想をもつ者はマルクス以外にもいた。しかし共産主義・社会主義といえばマルクスであり、他はほとんど知られていない。「○○といえば○○という人物になることが、君たちにとって重要なことだ。例えば社会主義のマルクスとか、ロックのビートルズのように」という説明しか、大学の授業では記憶に残っていない…。

リンカーン

リンカーンはアメリカ大統領であり、戦争状態だった南北アメリカを一つにまとめあげた政治家です。リンカーンがいなかったら今のアメリカはなかったかもしれない。

リンカーンのポイントはその演説です。下に出てくるチャーチルにも共通するが、演説の才能は歴史を変える能力です。リンカーンの場合、チャーチルのように意図して演説家になったかどうかはわからない。

リンカーンの「人民のための…」という演説からわかるように、言葉は短く、シンプルであるべきかもしれない。

ロックフェラー

ロックフェラーは人類史上最も富をきずいた起業家です。ロックフェラーのスタンダード・オイルは一時石油市場の 90% を支配しました。ロックフェラーは高リスク高利益の採掘でなく、精油や販売に特化したことで成功。

ロックフェラーから学ぶべきことはきわめて実践的で、有用で、単純です。「自分をコントロールする」ということ。

「タイタン」などの文献からわかるように、ロックフェラーは無数の人格が混ざっているような不可解な人物です。以前紹介したピーター・ティールの「ゼロ・トゥ・ワン」にあるように、成功者に共通した性格はないが、矛盾した特性は持っている。ロックフェラーはその極端な例です。

ロックフェラーは信心深く、警戒心が強く、習慣を大事にし、自分をいつもコントロールしました。アリストテレスの思想をそのままビジネスに実践した人物といえるかもしれない。

チャーチル

第二次世界大戦はチャーチルがドイツに屈しないことが決定的でした。チャーチルはイギリスを戦勝国に導き、資本主義国が第二次世界大戦後に繁栄する準備を整えた。

チャーチルはイギリス人、特にイギリスの政治家から崇拝されている。チャーチルの最大の功績はルーズベルトを味方につけたことかもしれない。

チャーチルから学ぶべきポイントは、おそらく他のどの政治家よりも多い。なぜなら第二次世界大戦は他のどの戦争よりも決定的であり、第二次世界大戦はつまるところチャーチルとドイツの戦いだからです。チャーチルから最初に学ぶべきことは次の 2 つ。

  1. 周囲と協力しないと負ける
  2. 支持を得るためにはユーモアが必要だ

ドイツの支配者が一匹狼だったのと対照的に、チャーチルは周囲と協力しました。戦争はチャーチルのようなタイプが勝利することを物語る。

言葉選びとユーモアの才覚から偉大な演説家になり、さらに偉大な政治家になった典型がチャーチルです。チャーチルの短い演説は戦争をためらっていたイギリス人を動かしました。時代の混沌としているときには演説家が活躍します。

終わりに

最初に紹介した高校倫理に出てくる人類史上最も偉大な哲学者7人と同じ人物が出てきました。偉大な人物は、世界史をどのように見るかで変わります。ここであげた人物は一つのパターンに合わせたリストにすぎません。

マルクスのところで出てきた教授の解説のように、偉大な人物というのは、その人物ではない特殊な名詞や形容詞の代名詞になっています。例えば

革命家=ナポレオン
大富豪=ロックフェラー
第二次世界大戦=チャーチル

といったように。偉大な人物は革命期や混沌とした時代から生まれているかというとそうではない。アリストテレスやニュートンの活躍した時期は、その前後する時代に比べて悲惨だったわけではない。本人の性格もほとんどばらばらです。共通点をあげるとすれば、上にあげた人物は全員、自分が得意とする場面で熱心に行動したということです。

次の記事

大人と社会人のための高校倫理