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使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」の意味と活用

助動詞「す」「さす」「しむ」はすべて使役と尊敬を表す。特に「しむ」は漢文でよく出てくるからなじみやすい。

単語 意味
使役 ~させる
尊敬 お~になる

文脈によって使役と尊敬を区別しなければいけないが、下に尊敬語(「給ふ」など)が続くときは尊敬である。例えば「せ給ふ」「させ給ふ」「しめ給ふ」…など。「す」「さす」「しむ」+「給ふ」という『尊敬+尊敬』の形を二重尊敬という。

「す」「さす」「しむ」の後に「給ふ」などの尊敬語が続いたら尊敬となる。

「す」「さす」「しむ」の接続と活用

活用 さす しむ
接続 未然形 未然形 未然形
未然形 させ しめ
連用形 させ しめ
終止形 さす しむ
連体形 する さする しむる
已然形 すれ さすれ しむれ
命令形 せよ させよ しめよ

「す」「さす」「しむ」の接続は要注意。どれも未然形接続だが、接続する用言に制限がある。

助動詞 接続
四段、ナ変、ラ変の動詞の未然形
さす 四段、ナ変、ラ変以外の動詞の未然形
しむ 特に制限なし

「す」「さす」「しむ」の例文

その年の夏、御息所はかなき心地にわづらひて、まかでなむとし給ふを、暇(いとま)さらに許させ給はず。 (源氏物語・桐壷)

典型的な二重尊敬。「せ給ふ」=「せ」+「給ふ」。主語は帝であり、「せ」は尊敬を表す。

夕月夜(ゆうづくよ)のをかしきほどに出だし立てさせ給ひて、やがて眺めおはします。かうやうの折は、御遊びなどせさせたまひしに… (源氏物語・桐壷)

最初の「させ給ひ」は「させ」+「給ひ」で「させ」は尊敬を表す。次の「させたまひ」も同様だが、その前に「せ」がある。「せさせたまひ」の最初の「せ」は「す」というサ変動詞の未然形である。

「せさせたまひ」の後の「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。

「せさせたまひし」
=「せ」+「させ」+「たまひ」+「し」
=サ変「す」の未然形+尊敬「さす」の連用形+尊敬「たまふ」の連用形+過去「き」の連体形

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画像出典:ウィキメディア・コモンズ「源氏物語」より(パブリックドメイン)

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